日本心臓血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1883-4108
Print ISSN : 0285-1474
ISSN-L : 0285-1474
原著
慢性血液透析症例の開心術における術後早期持続血液透析瀘過(CHDF)の有用性
山村 光弘光野 正孝田中 宏衞良本 政章福井 伸哉吉岡 良晃梶山 哲也宮本 裕治
著者情報
ジャーナル フリー

2010 年 39 巻 6 号 p. 300-304

詳細
抄録

近年慢性血液透析症例における開心術では単独の冠動脈バイパス術(CABG)や大動脈弁置換術(AVR)のみならず,同時手術も増加しているが,その手術成績は未だ良好ではない.これまで当科では,術後血行動態が安定した術翌日からの血液透析(hemodialysis以下HD)を施行していたが,最近では血行動態の影響が少なく多量に除水できる持続血液透析瀘過(Continuous Hemodiafiltration以下CHDF,メシル酸ナファモスタット30 mg/h使用下に除水速度約80 mg/h)を術後早期から使用することを原則としている.今回,慢性血液透析症例の開心術におけるCHDFの有用性をretrospectiveに検討した.対象は2003年1月から2008年12月末までの慢性血液透析症例におけるCABG and/or AVR 48例である.術後透析管理によって,術後CHDFを施行した36例(以下CHDF群,男:女=20 : 16,平均年齢67.0±9.1歳,術式は同時手術13例・単独CABG16例・単独AVR7例)と,HDを施行した12例(以下HD群,男:女=8 : 4,平均年齢68.0±9.5歳,術式は同時手術1例・単独CABG 6例・単独AVR 5例)の2群に分け,比較検討した.手術時間・人工心肺時間・術中水分バランスには,両群間に有意差はなかった.しかしCHDF群はHD群に比べ,術後透析管理の開始時間は早く(8.0±5.8 vs. 21.0±1.0時間)かつ術後24時間の除水総量(1,200±110 vs. 550±50 ml)も有意に多かった.しかも術後3時間・24時間・48時間のドレーン出血量は,両群間に有意差はなかった.病院死亡はCHDF群6例(17%,心不全3・不整脈・肺炎・広範囲腸管壊死,うち5例は同時手術例)で,HD群1例(8.3%,心不全,同時手術例)であった.今後も増加が予想される同時手術や重症例には,術翌日の血液透析よりも術直後から持続血液透析瀘過(CHDF)を使用するのがよいと思われる.

著者関連情報
© 2010 特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top