抄録
今回我々は,悪性リンパ腫の心筋浸潤により右房内に可動性の腫瘤病変を形成した比較的稀な症例を経験したので報告する.症例は食欲不振,呼吸苦を主訴とする71歳男性で,上部消化管内視鏡検査にて十二指腸腫瘍を指摘された.生検の結果び慢性大細胞型悪性リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma)と診断され,化学療法を施行する前に全身検索した結果,右房内を占拠する腫瘍が認められたため,当科紹介となった.腫瘍は心房中隔から一部大動脈基部まで浸潤していたため腫瘍を可及的に切除することにとどめた.循環動態は改善され,病理検査の結果DLBCLと診断された.化学療法を施行し,心臓腫瘍の再発なく現在外来にて治療継続中である.心臓に病変を認める悪性リンパ腫は一般にその病変部位とさまざまな合併症により,予後不良とされており,その診断,治療方法につき若干の文献的考察を加えて報告した.