抄録
症例は77歳,女性.数年前から労作時息切れがあり増悪傾向にあった.精査の結果,高度の僧帽弁閉鎖不全症,心房細動,鏡像型右胸心と診断された.手術は僧帽弁置換術および肺静脈隔離術が施行された.鏡像型右胸心の解剖学的位置関係は患者の左側に立った(通常は第一助手が立つ位置)術者から見て水平方向が逆になり,垂直方向は正常と変わらない.手術時の要点としては,(1)心臓および大血管の位置を確認し,体外循環の確立と僧帽弁へのアプローチを決定する,(2)水平方向の手術操作(開胸,カニュレーション,心房切開,僧帽弁輪への糸かけ)は左右が逆なので慎重に行う,(3)僧帽弁は術者の左側寄りに位置し,斜め右側に面しているので,僧帽弁輪へ糸をかける際に縫合針を把持する位置や角度,順手逆手,縫合針の刺入角度などの運針操作に注意する.