抄録
症例は83歳,女性で,遠位弓部大動脈嚢状瘤に対してMedtronic TALENT deviceを用い胸部ステントグラフト内挿術を施行した.中枢側標的ランディングゾーンは左総頸動脈分岐部直下(Z2)とし,目的位置にステントグラフトを留置できたが,直後から右橈骨動脈圧の低下を認め,経食道エコーで上行大動脈の解離が確認された.ただちに開胸手術へ移行すると,TALENT中枢側のグラフト材でカバーされていないベアスプリング(ベアステント)による弓部小弯側の内膜損傷が確認された.ベアステントの縫着部を切除し,留置したステントグラフトを併用した全弓部置換術を行った.時にTALENTステントグラフトは展開初期に特有の動きを呈する(開放異常)ことがあり,大動脈弓部に留置する際は注意を有すると考えられた.