2012 年 41 巻 5 号 p. 224-227
1993年1月から2010年12月までの間に当院にて施行された冠動脈バイパス手術3,129例のうち,慢性透析患者に対する単独冠動脈バイパス手術236例を対象とし,その遠隔成績および予後因子の検討を行った.患者背景としては,男性181例,女性55例,平均年齢64.1±9.7歳であった.腎不全の原疾患としては,糖尿病性腎症133例(56.4%),慢性糸球体腎炎94例(39.8%)で,平均透析歴は10.1±20.4年であった.合併疾患として,PAD(ABI 0.9以下)が107例(45.3%)であった.術式については,OPCAB 85例(36.0%),on pump conventional CABG 120例(50.8%)であった.遠隔期予後調査(追跡率89.5%,平均観察期間8.5年)の結果としては,手術死亡3.4%,病院死亡6.4%で,Kaplan-Meier法による長期遠隔成績は,1年生存率72.4%,3年生存率48.3%,5年生存率32.4%,10年生存率14.3%であった.遠隔期死亡原因として感染症が24.1%と最多であった.予後関連因子としてperipheral artery disease(PAD)の合併が統計学的に有意な予後不良因子(p<0.05)として明らかとなった.慢性透析患者に対する冠動脈バイパス手術の予後は不良であった.術式による手術成績に差はないものの,PADの合併の有無が長期予後に影響することが明らかになった.