2013 年 42 巻 2 号 p. 120-123
薬物使用歴のある成人に発症した,三尖弁位感染性心内膜炎に対して,弁形成術を施行した1例を報告する.症例は20歳男性.発熱を主訴に受診し,肺膿瘍を合併した三尖弁位感染性心内膜炎と診断され,抗生剤による加療が行われたが,炎症所見の遷延を認めた.血液培養から,黄色ブドウ球菌を検出,心臓超音波検査では三尖弁に疣贅と三尖弁閉鎖不全を認めた.肘部に多数の注射痕を認め,詳細な問診を行ったところ,覚醒剤の自己注射歴が判明した.抗生剤治療に抵抗性の感染性心内膜炎に対して,三尖弁形成術を行った.経過は良好で,術後2週間で独歩退院したが,予定された外来の受診はなく,術後も覚醒剤所持で逮捕されている.覚醒剤の再使用,術後の投薬管理の点から術式に一考を要した.