抄録
症例は77歳の男性.2年前に胸部X-Pにて胸部異常陰影を指摘され,当科を紹介された.CTにて右側大動脈弓に伴うKommerell憩室と診断された.自覚症状はなく経過観察された.経過中に憩室は徐々に拡大し最大径5.3 cmとなり,破裂の危険を考慮し手術適応とした.術前のCTでは,弓部分枝で鏡像的な右側大動脈弓とKommerell憩室を認めた.手術は右大腿動脈アプローチでbrachial wire法により自作の開窓式ステントグラフト内挿術を施行した.現在術後30カ月経過しendoleak,憩室の拡大は認めていない.きわめて稀な左鎖骨下動脈起始異常を伴わない右側大動脈弓,Kommerell憩室に対する開窓式ステントグラフト内挿術を経験したので報告した.