日本心臓血管外科学会雑誌
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原著
大動脈二尖弁における上行大動脈拡大の形態と組織学的な特徴
吉岡 良晃光野 正孝山村 光弘田中 宏衞良本 政章福井 伸哉辻家 紀子梶山 哲也宮本 裕治羽尾 裕之
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2013 年 42 巻 2 号 p. 89-93

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抄録
大動脈二尖弁(BAV)は,遺伝性の結合織異常であり,弁機能異常がなくても,大動脈基部や上行大動脈が拡大するおそれがある.今回BAVの形態と上行大動脈拡大の関連,および上行大動脈拡大の形態や上行大動脈壁の病理学的な特徴について検討した.2004年以降に大動脈弁膜症に対して大動脈弁置換術(CABG併施を含む)を施行した276例中,BAVと診断した60例(21.5%)を対象とした.BAVの形態は,Sievers分類を用い,上行大動脈拡大の形態は,造影CT(3D構築)にて評価した.病理学的な特徴は,嚢状中膜壊死の程度をaortic wall scoreを用いて評価した.BAVで最も頻度が高いType 1のなかで,L/R型に上行大動脈拡大が多く(48%),BAVの形態と上行大動脈拡大の関係が示唆された.上行大動脈拡大の形態的な特徴は,asymmetric dilatationが多かったことであるが,基部拡大例ではすべてsymmetric dilatationを呈していた.病理学的な特徴は,上行大動脈が拡大していない症例も含めて全例に嚢状中膜壊死を認めた点であった.Aortic wall scoreは基部拡大群で有意に高値であり,上行拡大群よりも壁の変性が高度であるという結果であった.結論として,BAVの場合では基部拡大が軽度でも,積極的な基部置換術が必要であると考えられた.
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