抄録
症例は79歳,女性.大動脈弁位の人工弁感染性心内膜炎(PVE)の診断で当科紹介となった.術前の心エコーでは人工弁に付着する2 cmを超える巨大疣贅が確認されていたが,執刀時の経食道心エコーでは巨大疣贅を確認できず,術中所見でも認めなかったことから飛散した可能性が考えられた.臓器塞栓を考慮し慎重な術後管理を行っていたが,術後11時間後から右下肢の冷感と末梢動脈の拍動触知不能となり,右下肢急性動脈閉塞の診断に至った.速やかに血栓除去術を行い,菌塊による塞栓子と多量の新鮮血栓を除去し,救肢することができた.PVEの疣贅飛散による下肢動脈閉塞は稀であり,報告する.