抄録
心臓原発悪性リンパ腫はその頻度が非常に稀であり,臨床症状に乏しいことからも診断に至ることも困難とされ予後不良な疾患である.症例は76歳,女性.労作時呼吸苦を主訴に近医を受診した.胸部CT上,右房および下大静脈を圧排する不均一に造影される腫瘍を認めた.血清IL-2r値も高値であり,心臓原発悪性リンパ腫の疑いにて精査の予定であったが,心不全症状が急速に増悪し,そのコントロールおよび確定診断目的に準緊急的に手術の方針となった.手術は上行大動脈送血,上大静脈,下大静脈(右大腿静脈経由)脱血にて右室前面,右房の腫瘍を可及的に切除し,欠損した右房はePTFEパッチにて閉鎖し手術を終了した.術後,心不全症状は改善していたが,術後7日目に心不全の増悪を認め,CT検査にて腫瘍の急速な増大を認めた.術後14日目に化学療法(CHASER療法)を開始し,心不全症状は徐々に改善した.術後6コースを終了し,CT上腫瘍は著明な減少をきたし完全寛解を得ている.