抄録
症例は66歳男性,間欠的な腹背部痛を主訴に当院を受診した.白血球上昇,炎症反応陽性,IgG4高値,上腸間膜動脈や腎動脈に及ぶ大動脈周囲組織の全周性肥厚所見を認めた.特発性後腹膜線維症と診断され,プレドニゾロン(PSL)の内服が開始された.PSLの内服に伴い大動脈周囲の軟部組織は縮小を認めたが,腹腔動脈分岐部を中心とする胸腹部大動脈瘤(Crawford IV型)を認め当科初診となった.その後瘤の急速拡大を認め,PSLを漸減し早期手術の方針とした.慢性大動脈周囲炎に伴う瘤状変化が疑われたが,経過より感染瘤の合併が否定できず,リファンピシン浸透人工血管を使用した.術後,大動脈瘤周囲組織,限局解離していた偽腔内,瘤壁より肺炎球菌が陽性と判明し,抗生剤投与を厳重に行い良好な経過を得た.