2014 年 43 巻 1 号 p. 9-14
症例は80歳女性.軽度の閉塞性肥大型心筋症を合併した狭心症に対して冠動脈バイパス術を施行した.数時間後より低心拍出量症候群に陥り血清心筋逸脱酵素値が上昇した.冠動脈造影でバイパスグラフトはすべて開存し,新規病変を認めなかった.心エコーでの心尖部の広範な無収縮およびballooningと基部の過収縮の所見から,たこつぼ型心筋症と診断した.低血圧,低心拍出量状態であったためIntra-aortic balloon pumping(IABP)による循環補助を開始した.しかし左室流出路狭窄および僧帽弁逆流が増悪し治療に難渋した.左室壁運動が改善後にIABPを離脱し血行動態は回復した.冠動脈バイパス術後にたこつぼ型心筋症,左室流出路狭窄,僧帽弁逆流により複雑化した病態について文献的考察を含めて報告する.