日本心臓血管外科学会雑誌
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症例報告
人工血管瘤の1治験例
坂本 滋坂本 大輔
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2014 年 43 巻 4 号 p. 181-184

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抄録
症例は78歳,男性.1980年にDeBakey IIIb大動脈解離の診断でCooley double velour knitted Dacron(CDVKD)を使用した胸部下行大動脈人工血管置換術を施行された.2012年1月頃より背部痛と血痰を認めるようになり,当科を紹介された.造影CTでは32年前に施行された人工血管径が最大80 mm以上に拡大した人工血管瘤と診断した.背部痛と血痰が持続するため緊急手術を考慮した.治療戦略としては骨盤内と横隔膜上部の血管の屈曲蛇行が強いこと,瘤の最大径が80 mm以上と大きいこと,鎖骨下動脈起始部からlanding zoneとなる動脈の石灰化が強いことなどからthoracic endovascular repair(TEVAR)ではエンドリークやmigrationの合併症を起すことが危惧されたため胸骨正中切開で,体外循環を併用した弓部大動脈人工血管置換術を選択した.術後は経過良好で,術後5週で退院した.人工血管破綻による人工血管瘤の報告は少ないが,とくに術後,長期間経過しているCDVKDを使用した人工血管置換術症例は,人工血管の劣化による人工血管瘤が発生する可能性があり,注意深い術後の経過観察を行う必要がある.
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