日本心臓血管外科学会雑誌
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症例報告
心臓術後の虚血性大腸炎に対し,ステントによる腹腔動脈の血管内治療が著効した2治験例
渡辺 芳樹高野 弘志堀口 敬吉龍 正雄鳥飼 慶川本 誠一山川 美帆岩崎 祐介
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2014 年 43 巻 4 号 p. 218-223

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抄録

心臓手術後の腸管虚血は稀ではあるが,致死的な合併症である.今回われわれは心臓手術後の虚血性大腸炎に対し,ステントを用いた腹腔動脈の狭窄解除が著効した2例を経験した.症例1は65歳の男性で,心拍動下冠動脈バイパス術の術中に心筋梗塞が生じ低心拍出状態に陥った.術後19日目頃より腹痛および下血を認め,大腸ファイバー検査でS状結腸から下行結腸の虚血性変化を認めた.腹部血管造影のうえ,腹腔動脈の狭窄に対しステントによる拡張術を施行し,その後腹痛,下血などの症状は改善した.症例2は60歳の女性,心筋梗塞後左室瘤に対し,左室形成術を施行したが,術後9日目より食後に腹痛を認め,術後33日目に大量の下血が生じた.大腸ファイバー検査で下行直腸に虚血性変化を認め,症例1と同様に腹腔動脈の狭窄に対してステントによる拡張術を行った.その後,腹痛などの症状は軽快した.腸管虚血に対する治療として,従来開腹による血行再建術が施行されてきたが,近年,ステント留置を含めた血管内治療が行われており,今回のような心臓手術後の全身状態が不安定な患者に対して,より低侵襲な血管内治療は有効であると考えられた.

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