抄録
症例は男児.在胎40週0日,体重3,465 gで仮死なく出生した.生直後より高度のチアノーゼを認め心エコー検査にて両大血管右室起始・大動脈弓離断症と診断された.同日よりプロスタグランディン製剤の持続静注が開始され,当院NICUへ緊急搬送された.高肺血流に伴う急性心不全状態であったため,4生日に両側肺動脈絞扼術を施行した.術後に利尿が得られ全身状態は改善したが心不全状態が継続したため,9生日時に根治手術を行った.胸骨再正中切開下に上下半身分離体外循環を確立し,三尖弁経由にVSDから心室内血流路を作成し,次にtrap door法を用いて冠動脈移植を行った.Lecompte maneuverの後に大動脈弓再建(直接吻合)を行った.さらに右室流出路をパッチで拡大し,大動脈遮断解除後に肺動脈再建を行った.人工心肺離脱はとくに問題なく,開胸状態で手術を終了し4病日に閉胸し14病日に人工呼吸器を離脱した.術後に肺炎・乳び胸などを合併したが内科的治療にて改善し,78病日に退院した.