抄録
鎖骨下動脈瘤は,末梢動脈瘤のなかでも稀な疾患であり,その存在部位によって,術式や到達方法が大きく異なる.今回,右鎖骨下動脈瘤(胸腔内型)に対してハイブリッド治療を施行し,良好な治療経過を得たので報告する.症例は75歳男性.腹部大動脈瘤での経過観察中に施行した造影CT検査にて右鎖骨下動脈近位部に瘤径38 mmの鎖骨下動脈瘤を認めた.術前精査で脳血管疾患を認めたことから,手術は腋窩動脈交叉バイパス術で右上肢と右椎骨動脈の血流を確保しつつ,右総頸動脈-腕頭動脈ステントグラフト内挿術と右鎖骨下動脈末梢コイル塞栓術を施行し瘤を空置する方法とした.術後造影でエンドリークはなく,右総頸動脈および右椎骨動脈の血流は良好であった.胸腔内型の鎖骨下動脈瘤に対し,非解剖学的バイパス術と血管内治療を併用したハイブリッド治療にて良好な結果を得た.右鎖骨下動脈瘤に対する治療法として,開胸せず低侵襲かつ術中の脳灌流低下を予防できる有用な治療法と考える.