日本心臓血管外科学会雑誌
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43 巻 , 5 号
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巻頭言
総説
  • 丸山 雄二, David J Chambers, 別所 竜蔵, 藤井 正大, 仁科 大, 新田 隆, 落 雅美
    2014 年 43 巻 5 号 p. 239-253
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/23
    ジャーナル フリー
    高カリウムを用いた脱分極型心筋保護液は確立された心筋保護法である.しかしながら,高カリウム自体が虚血中に細胞内カルシウム負荷をもたらし心筋障害をきたすという問題があることも知られており,今後より優れた心筋保護法の開発が期待されている.高カリウムを用いない非脱分極型心筋保護液について,(1)急速な心停止,(2)心筋保護効果,(3)可逆性,(4)毒性という観点から,おのおのの心筋保護液の特徴を検討したが,いずれもまだ確立したものとはいいがたい.そのなかでも,高マグネシウム心筋保護液,エスモロール心筋保護液は,高カリウム心筋保護液を凌駕する心筋保護効果をもち,可逆性,毒性という点でも問題がなく,今後さらなる臨床応用が期待される.また内因性心筋保護効果を誘導する手段として,“ischemic preconditioning”と“ischemic postconditioning”という概念が注目されている.しかしながら,心臓手術におけるこれらの付加的心筋保護効果は確立されておらず,いずれも複数回の大動脈遮断による脳塞栓症というリスクを伴うため,すべての心臓手術に適用するには難しいかもしれない.一方,虚血前または再灌流時に薬剤を使用する“pharmacological preconditioning”と“pharmacological postconditioning”は,複数回の大動脈遮断を必要としない簡便な方法であり,今後心臓手術への適用が期待される.
原著
  • 新垣 正美, 青見 茂之, 冨岡 秀行, 笹生 正樹, 大森 一史, 遊佐 裕明, 石井 光, 東 隆, 斎藤 聡, 山崎 健二
    2014 年 43 巻 5 号 p. 254-259
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/23
    ジャーナル フリー
    〔背景〕成人先天性心疾患(ACHD)の増加に伴い,ACHDを有する胸部大動脈瘤症例(TAA)が増加している.当院での10年の症例を検討した.〔対象〕2002年から2011年まで,当科で施行したACHDを有するTAAの15例.〔結果〕男性13名,女性2名,再手術時年齢33.3±10.8歳.先天性心疾患は,TOF 5例,congenital AS 4例,VSD 3例,CoA complex 1例,poly/DORV 1例,poly/corrected TGA 1例.大動脈基部拡大12例,上行大動脈瘤3例,ARの合併を10例に認めた.13例は待機的手術,2例が緊急手術で,II型急性大動脈解離およびKonno patchが離脱した症例であった.術式はBentall手術(+部分弓部置換術)13例,上行大動脈置換+AVR 1例,上行/部分弓部大動脈置換1例であった.手術時間572.8±101.4分,人工心肺時間295.8±100.2分,大動脈遮断時間188.1±58.8分.術後30日以内の死亡は認めなかった.MRSA敗血症による病院死亡を1例に認めたがその他の症例は全例が軽快退院,ICU滞在日数9.4±10.1日,在院日数34.4±18.2日であった.〔結語〕ACHDを有するTAA症例ではTOFが最多であった.ACHDを有するTAA症例の手術成績は良好であった.
症例報告
  • 神崎 智仁, 小出 昌秋, 國井 佳文, 渡邊 一正, 前田 拓也, 大箸 祐子
    2014 年 43 巻 5 号 p. 260-264
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/23
    ジャーナル フリー
    弁輪部膿瘍やバルサルバ洞の破裂などは感染性心内膜炎の合併症として知られているが,小児例での報告は少ない.今回われわれは小児期に感染性心内膜炎を発症し,バルサルバ洞仮性瘤および弁輪部膿瘍をきたした症例を経験したため報告する.症例は6歳女児.感染性心内膜炎および重度の大動脈弁閉鎖不全の診断にて搬送された.強い心不全症状およびCTにてバルサルバ洞に仮性瘤を認めたため緊急手術を行った.左冠尖には疣贅が付着,左バルサルバ洞に大きな内膜欠損があり仮性瘤を形成していた.仮性瘤は大動脈弁輪部膿瘍に連続しており僧帽弁輪に達していた.弁輪~バルサルバ洞の組織欠損部を牛心膜パッチにて補填し修復したうえで,大動脈弁置換術を施行した.術後経過は良好で,十分な抗生剤治療を継続した後軽快退院となった.
  • 白石 修一, 高橋 昌, 渡邉 マヤ, 杉本 愛, 土田 正則
    2014 年 43 巻 5 号 p. 265-269
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/23
    ジャーナル フリー
    症例は男児.在胎40週0日,体重3,465 gで仮死なく出生した.生直後より高度のチアノーゼを認め心エコー検査にて両大血管右室起始・大動脈弓離断症と診断された.同日よりプロスタグランディン製剤の持続静注が開始され,当院NICUへ緊急搬送された.高肺血流に伴う急性心不全状態であったため,4生日に両側肺動脈絞扼術を施行した.術後に利尿が得られ全身状態は改善したが心不全状態が継続したため,9生日時に根治手術を行った.胸骨再正中切開下に上下半身分離体外循環を確立し,三尖弁経由にVSDから心室内血流路を作成し,次にtrap door法を用いて冠動脈移植を行った.Lecompte maneuverの後に大動脈弓再建(直接吻合)を行った.さらに右室流出路をパッチで拡大し,大動脈遮断解除後に肺動脈再建を行った.人工心肺離脱はとくに問題なく,開胸状態で手術を終了し4病日に閉胸し14病日に人工呼吸器を離脱した.術後に肺炎・乳び胸などを合併したが内科的治療にて改善し,78病日に退院した.
  • 細川 幸夫, 鬼塚 誠二, 飛永 覚, 廣松 伸一, 澤田 健太郎, 中村 英司, 大野 智和, 福田 勇人, 明石 英俊, 田中 啓之
    2014 年 43 巻 5 号 p. 270-273
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/23
    ジャーナル フリー
    鎖骨下動脈瘤は,末梢動脈瘤のなかでも稀な疾患であり,その存在部位によって,術式や到達方法が大きく異なる.今回,右鎖骨下動脈瘤(胸腔内型)に対してハイブリッド治療を施行し,良好な治療経過を得たので報告する.症例は75歳男性.腹部大動脈瘤での経過観察中に施行した造影CT検査にて右鎖骨下動脈近位部に瘤径38 mmの鎖骨下動脈瘤を認めた.術前精査で脳血管疾患を認めたことから,手術は腋窩動脈交叉バイパス術で右上肢と右椎骨動脈の血流を確保しつつ,右総頸動脈-腕頭動脈ステントグラフト内挿術と右鎖骨下動脈末梢コイル塞栓術を施行し瘤を空置する方法とした.術後造影でエンドリークはなく,右総頸動脈および右椎骨動脈の血流は良好であった.胸腔内型の鎖骨下動脈瘤に対し,非解剖学的バイパス術と血管内治療を併用したハイブリッド治療にて良好な結果を得た.右鎖骨下動脈瘤に対する治療法として,開胸せず低侵襲かつ術中の脳灌流低下を予防できる有用な治療法と考える.
  • 田中 睦郎, 岡本 実
    2014 年 43 巻 5 号 p. 274-278
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/23
    ジャーナル フリー
    本邦では静注薬物使用による感染性心内膜炎(infective endocarditis ; IE)や人工弁感染(prosthetic valve endocarditis ; PVE)の報告は少ない.われわれは静注薬物使用によるIEのため弁置換術を受け,その後PVEを発症し静注薬物再使用も判明した症例を経験したので報告する.症例は21歳女性.以前,われわれが静注薬物常用者におけるIE症例として報告した患者で2010年11月に僧帽弁置換術,三尖弁形成術が施行されている.術後5カ月目から外来通院を自己中断し,2012年2月に発熱と全身倦怠感を主訴に当院搬送となった.血液培養は陰性であったが,人工弁に疣贅を認め,血液検査では白血球値とCRP値の上昇が認められたためPVEと診断された.また尿中薬物検査は陽性で静注薬物再使用も判明した.抗生剤投与による保存的加療を開始したが疣贅サイズと可動性が増したため入院18日後に手術を施行し,手術は再僧帽弁置換術(生体弁使用),再三尖弁形成術を行った.術後は28日間の抗菌薬投与を行い,32日目に退院となった.現在は当科外来で加療継続し,感染再燃および静注薬物再使用もなく経過している.
  • 尾藤 康行, 平居 秀和, 佐々木 康之, 細野 光治, 中平 敦士, 末廣 泰男, 窪田 優子, 賀来 大輔, 宮部 誠, 末廣 茂文
    2014 年 43 巻 5 号 p. 279-282
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/23
    ジャーナル フリー
    冠動脈起始異常は稀であるが,大動脈弁手術に際しては手術時の冠動脈損傷や術後の心筋虚血など重篤な合併症が発生しうる.今回われわれは左冠動脈起始走行異常を伴った大動脈弁狭窄症(AS)の手術例を経験し良好な結果を得た.症例は84歳,男性.労作時呼吸困難を呈する重症ASと診断された.術前冠動脈造影検査および冠動脈CTにおいて,左冠動脈前下行枝は右冠動脈から分枝し,回旋枝は右冠動脈に隣接して独立起始し,大動脈基部を無冠尖側から背側へ回り込むように走行していた.手術においては,大動脈基部の回旋枝を可及的に剥離露出して走行を確認した後に,これを損傷しないよう注意しながら大動脈横切開を行った.冠動脈の入口部がひとつになっており通常より拡大していたため,確実な順行性の心筋保護液注入は困難であると判断した.また,冠静脈洞開口部からの冠灌流用カテーテルの挿入も困難であったため,心外膜側から冠静脈洞へ直接カニューレを挿入し逆行性に心筋保護液の注入を行った.Mosaic 19 mm弁(Medtronic, Minneapolis, USA)を使用してsupra-annular positionに大動脈弁置換術を施行し,術後経過は良好であった.冠動脈起始走行異常例に対する大動脈弁置換では,起こりうる合併症に留意した慎重な手術手技と経過観察が必要と考えられた.
  • 加藤 全功, 杉村 幸春, 外山 雅章
    2014 年 43 巻 5 号 p. 283-286
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/23
    ジャーナル フリー
    術前より脳梗塞およびくも膜下出血,髄膜炎を合併した感染性心内膜炎の1例に対し,内科的治療を選択し抗生剤加療を開始したが,入院11日目に腱索断裂による急性僧帽弁閉鎖不全症を認め,心不全加療困難となり緊急手術を施行した.術後意識状態は改善し,脳合併症の増悪を呈することなく良好な結果を得たため,その治療経過とともに脳合併症を併発した感染性心内膜炎の外科的治療について文献的考察を加えて報告する.
  • 入澤 友輔, 都津川 敏範, 吉鷹 秀範, 田村 健太郎, 石田 敦久, 近沢 元太, 毛利 教生, 平岡 有努, 松下 弘, 坂口 太一
    2014 年 43 巻 5 号 p. 287-290
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/23
    ジャーナル フリー
    症例は64歳男性.半年前より胸痛を認め,大動脈弁狭窄症と診断されて,当科紹介受診となった.患者はエホバの証人信者であり,無輸血手術を希望した.そのため胸骨切開を行わない小切開大動脈弁置換術(MICS AVR)を行う方針とした.手術は右第4肋間開胸アプローチし,機械弁ATS AP360 20 mmで大動脈弁置換を行った.手術直後のHb値は11.2 g/dlであった.経過良好で術後17日に退院となった.エホバの証人信者のように無輸血で手術を行わなくてはならない場合,胸骨を切らずにアプローチするMICS AVRは,出血も少なく有用な方法と考えられた.
  • 平原 浩幸, 菅原 正明, 小熊 文昭, 目黒 昌
    2014 年 43 巻 5 号 p. 291-295
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/23
    ジャーナル フリー
    急性大動脈解離術後の吻合部に発生した解離性腕頭動脈瘤をステントグラフト内挿術で治療し,良好な結果が得られたため報告する.症例は62歳の男性で,腕頭動脈の解離を伴うスタンフォードA型の急性大動脈解離のため全弓部大動脈置換術を施行した.患者は術後早期から右上肢の労作時の疲労感と鈍痛を訴え,右上腕血圧は左上腕に比べ有意に低下していた.術後1カ月目に造影CT検査を施行したところ,腕頭動脈の人工血管吻合部に吻合部リークをおこし,そこが偽腔へのエントリーになっている最大短径30 mmの解離性動脈瘤を形成していた.リエントリーはなく,著しく拡大した偽腔が真腔を圧迫して上肢の虚血症状を起こしていた.術後3カ月目に撮影した造影CT検査で最大短径35 mmに増大し,上肢の虚血症状もあることから手術適応と判断してステントグラフト内挿術を行った.右腋窩動脈からステントグラフトを内挿し,解離性動脈瘤の偽腔へのエントリーを閉鎖するように留置したところ合併症をきたすことなく症状は解消し,術後7日で退院した.解離性動脈瘤の偽腔は完全に消失し,3年経過後もステントグラフトに起因する合併症は発生しなかった.ステントグラフト内挿術は吻合部に発生したエントリーを低侵襲に閉鎖でき,本例のようなリエントリーのない吻合部リークによる解離性動脈瘤にはきわめて有用な治療法である.
  • 尼子 真生, 飛永 覚, 新谷 悠介, 細川 幸夫, 中村 英司, 大塚 裕之, 赤須 晃治, 鬼塚 誠二, 廣松 伸一, 明石 英俊
    2014 年 43 巻 5 号 p. 296-299
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/23
    ジャーナル フリー
    二弁置換術後に大動脈-右心房交通を合併した慢性大動脈解離破裂の診断で手術を施行した症例を経験したので報告する.症例は59歳男性で,57歳時に他院にて二弁置換を施行された.術後経過は良好であったが,今回,10日前より顔面浮腫および全身倦怠感が出現したため当院紹介となった.大動脈解離,大動脈-右心房交通を認めたため緊急手術を行った.大動脈解離は慢性であり,前回の大動脈切開部にentryを認めた.外膜は一部欠損し,破裂後に仮性瘤を形成し,仮性瘤から右心房内に穿孔していた.手術は穿孔部を縫合閉鎖し,型どおりに上行大動脈置換術を施行した.術後は問題なく経過し,17病日に独歩で転院となった.
  • 八神 啓, 村山 弘臣, 長谷川 広樹, 前田 正信
    2014 年 43 巻 5 号 p. 300-304
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/23
    ジャーナル フリー
    症例は,在胎40週0日,出生時体重3,591 g,児頭骨盤不均衡のため予定帝王切開にて出生した男児.日齢1に連続性雑音のため当院に搬送された.入院時の心臓超音波検査で,主肺動脈から右に分岐する肺動脈分枝を認めない一方,上行大動脈から右肺に向かう血流を確認し,右肺動脈大動脈起始と診断した.当初よりこの血流は細かったが,日齢3に自然消失し,片側肺動脈欠損に診断を修正した.この症例に対し,日齢8に腕頭動脈から右肺門部肺動脈に,PTFE人工血管3 mmを用いて,体動脈-肺動脈短絡手術を行った.その後,右肺動脈の成長を待って,日齢48に主肺動脈-右肺動脈間にPTFE人工血管8 mmを間置することで,解剖学的に根治した.術後経過は良好であった.片側肺動脈欠損は非常に稀な疾患で,幼少期は無症状なことが多く,早期に診断されることは少ない.そのため,診断されたときにはすでに患側肺の委縮,低形成が進行しており,しばしば血行再建が困難なことがあると言われている.今回われわれは,片側肺動脈欠損に対して,新生児期から乳児期早期に二期的根治を施行し,良好な結果を得たので報告する.
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