日本心臓血管外科学会雑誌
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症例報告
先天性心疾患手術後の若年女性に発症した大動脈弁閉鎖不全症に対して大動脈弁形成術を施行した1症例
二神 大介小宮 達彦
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2015 年 44 巻 1 号 p. 45-49

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抄録

大動脈弁閉鎖不全症における心膜パッチ形成は1963年にRossがはじめて施行して以来,リウマチや先天性の大動脈弁疾患において弁尖の置換や延長に行われている.現在,用いた自己心膜の長期の安定性や石灰化について多くの関心が寄せられている.今回,われわれは先天性心疾患手術後の若年女性に発症した大動脈弁閉鎖不全症においてウシ心膜パッチを用いた大動脈弁形成術を施行した症例を経験した.症例は29歳女性で,先天性心疾患手術後22年後に大動脈弁逆流が重症となり,しだいに心不全症状を発症した.心臓超音波検査や心臓CTにおいて右冠尖が短縮しており,重度の大動脈閉鎖不全症を認めた.妊娠希望が強く,人工物の使用をおさえるために大動脈弁形成術を選択した.報告によれば,自己心膜が異種心膜より安定性が良好であるとの報告もあるが,本症例は再手術症例で自己心膜を使用できず,グルタールアルデヒド処理を施行したウシ心膜パッチを使用した.術前必要であった内服薬の使用も必要なくなり,術後現在1年間は妊娠可能となった.長期的なパッチ形成に対する若干の文献的考察を加えて報告する.

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