日本心臓血管外科学会雑誌
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症例報告
遠位弓部大動脈瘤に対してステントグラフト内挿術後にアナフィラクトイド紫斑と思われる病態を呈した1例
古野 哲慎植田 知宏大石 恭久山木 悠太今坂 堅一田山 栄基富田 幸裕
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2015 年 44 巻 1 号 p. 59-63

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抄録

ステントグラフト内挿術後にアナフィラクトイド紫斑と思われる病態を呈した症例を経験したので報告する.症例は79歳男性.遠位弓部大動脈嚢状瘤に対してステントグラフト内挿術を施行した.術後3日目に腹部から下腿にかけて紫斑が出現した.また同時期より発熱を間歇的に認めた(最大38.8°C).血液検査ではCRPが12 mg/dlまで上昇し,その後も4 mg/dl前後で推移した.皮膚科でアナフィラクトイド紫斑の診断となり,ステロイド外用,およびアドナ,トランサミンの内服を開始し,紫斑は徐々に改善した.炎症反応の上昇は,経過とともに徐々に改善した.悪性疾患の可能性も疑い精査を施行したが,熱源および紫斑の原因となる疾患の同定には至らなかった.現在も外来にて経過観察中であるが,紫斑の再燃など問題となる所見は認めていない.アナフィラクトイド紫斑の好発年齢は学童期でその発症誘引のほとんどは上気道炎である.時に成人発症することもあるが,その場合の病因として外科的侵襲,上気道以外の感染症,薬剤,慢性肺,肝,腎疾患,悪性腫瘍などの報告がある.本症例ではステントグラフト内挿術という外科的侵襲が原因となったと考えられた.また,アナフィラクトイド紫斑は関節病変,消化器病変,腎病変などの合併が問題となるが,本症例では認めなかった.

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