抄録
心不全にて発症した腹部大動脈-下大静脈瘻の1例を経験したので報告する.症例は80歳男性.突然の呼吸苦,両下腿浮腫を自覚し,当院救急外来を受診した.急性心不全と診断され,緊急入院となった.血管造影検査の動脈相にて腹部大動脈から下大静脈が造影され,腹部大動脈-下大静脈瘻と診断した.内科的コントロールにて心不全症状の改善がなく準緊急的に手術を行った.大動脈瘤は認めず,瘻孔のみの閉鎖でよいと判断し,Stent graft内挿術を行った.術後経過は良好で術後15日目に退院となった.大動脈瘤を伴わない腹部大動脈-下大静脈瘻は非常に稀な疾患であり,診断に難渋する.症例によっては腹部大動脈-下大静脈瘻に対してStent graft内挿術が有用であると考えられる.