日本心臓血管外科学会雑誌
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[先天性疾患]
左心系の低形成を合併した下心臓型総肺静脈還流異常症に対して,段階的治療を行った1例
中田 朋宏池田 義南方 謙二山﨑 和裕阪口 仁寿上原 京勲坂本 和久中津 太郎平間 大介坂田 隆造
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2016 年 45 巻 1 号 p. 32-36

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抄録

総肺静脈還流異常症(TAPVC)において,稀に左心系が非常に小さく,左心低形成症候群様の血行動態を示すものがあり,その対応に苦慮することがある.症例は1生日の女児,心エコーおよびCT検査にて下心臓型TAPVC,左心系の低形成(hypoplastic left heart complex),両側上大静脈,右鎖骨下動脈起始異常と診断された.肺静脈狭窄のため,1生日に準緊急的にTAPVC修復を行い,心房中隔欠損(ASD)作製術および両側肺動脈絞扼術(BPAB)も併せて行った.術後経過は良好であったが,術後の左心系の成長乏しく,47生日にNorwood手術(肺血流は右室-肺動脈導管5 mm人工血管で再建)を行った.その後もやはり左心系の成長乏しく,単心室型治療を選択することを決定し,6カ月時に両方向性Glenn手術,1歳11カ月時に完全右心バイパス手術を施行した.TAPVCを合併した左心系のボーダーライン症例に対して,TAPVC修復+BPAB+ASD作製を行うことで,左心系の発育を待ち,単心室/二心室型の治療方針を決定する方針は妥当と思われた.

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