日本心臓血管外科学会雑誌
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原著
上行大動脈送血困難症例に対する腕頭動脈送血の検討
青木 淳尾本 正丸田 一人益田 智章
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2016 年 45 巻 5 号 p. 211-217

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抄録

[目的]体外循環における送血部位は,上行大動脈が第一選択であるが,高度石灰化,解離,拡張性病変など上行大動脈送血が困難な症例に対して,2013年1月より腕頭動脈送血(BCA)を導入したので,その簡便性と安全性を検討した.[方法]対象は,大動脈弁狭窄症に対する大動脈弁置換術(AVR)62例(上行大動脈送血51例,BCA 11例),上行大動脈解離または拡張性病変44例(上行大動脈送血22例,BCA 7例,腋窩動脈送血15例)であり,手術開始から体外循環開始までの時間,麻酔覚醒時の脳神経障害の有無,送血部位に起因する合併症を評価した.[結果]AVR症例では,手術開始から体外循環開始までの時間は,BCA 51±9分,上行大動脈送血 47±10分(p=0.34),上行大動脈病変症例では,BCA 49±11分,上行大動脈送血 52±16分(p=0.82)と有意差を認めなかった.麻酔覚醒時の脳血管障害は,AVR症例BCAで覚醒遅延があり,頭部CTにて後頭葉の脳梗塞を発症した1例のみであった.送血部位に関連した合併症は,長期ステロイド内服歴のあるAVR症例BCAで術中上行大動脈解離を発症した.[結語]BCAは,症例を適切に選択することで安全に施行可能な手技であると思われた.

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