日本心臓血管外科学会雑誌
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[末梢血管]
流入血管のコントロールのみで治療しえた多発腎動脈瘤を伴う腎動静脈奇形(Arteriovenous malformation : AVM)の2例の検討
金子 健二郎大森 槙子小澤 博嗣平山 茂樹金岡 祐司大木 隆生
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2016 年 45 巻 6 号 p. 306-312

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抄録

腎動静脈奇形(Arteriovenous malformation : AVM)に対する治療は,現在血管内治療が主流となってきている.流入動脈と流出静脈がそれぞれ1本であるAneurysmal typeの腎AVMに対する血管内治療は,瘤自体の塞栓を目的とするのではなく,inflowとなる流入動脈のコントロールが重要となる.今回,多発瘤を伴う腎AVM症例で,流入血管のコントロールのみで治療しえた2症例を経験したので報告する.症例1は76歳女性.他疾患精査時にAVMを指摘された.右腎動脈の内膜欠損部から瘤は4個形成されており(径38/44/24/35 mm),下大静脈(IVC)に流入する流出静脈を認めた.治療は,内膜欠損部をまたぐ形で右腎動脈本管にカバードステントを留置する予定としたが,腹部大動脈からの細い枝が中枢の瘤に流入していることが判明した.そのため,その中枢の瘤のみコイル塞栓を行った後,カバードステントを留置することで,動静脈シャントを遮断した.症例2は78歳男性.腰痛精査時,CTで腎AVMを指摘された.右腎動脈からの後区域枝末梢がそのまま瘤化(多発)し,IVCへ流入していた.瘤から腎実質への分岐はないため,その入口部のみコイル塞栓を施行した.両症例ともに,腎血流はすべて温存され,腎機能の悪化も認められなかった.術前レニンアンギオテンシン系は両症例とも亢進はしていなかったが,術後血圧のコントロールが良好となり,症例1では,BNPの著明な低下が認められた.Aneurysmal typeの腎AVMに対する治療は,破裂予防目的のみならず,シャント量の多さからくる高血圧や,心不全の改善目的という側面も考慮すべきものであると考えられる.

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