日本心臓血管外科学会雑誌
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[大血管]
術前診断困難であった弓部大動脈瘤肺動脈穿破に対して胸部ステントグラフト留置術を行った1例
横山 毅人川合 雄二郎新津 宏和豊田 泰幸津田 泰利白鳥 一明竹村 隆広
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2016 年 45 巻 6 号 p. 302-305

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抄録

弓部大動脈瘤の肺動脈穿破は稀な疾患であるが,発症後急激に心不全が増悪し重篤な状態となるため診断,救命が困難である場合が多い.今回われわれは,同疾患に対して胸部ステントグラフト留置術を施行し,良好な結果を得られたため報告する.症例は79歳男性.全身倦怠感,呂律困難にて近医を受診し,CTにて偶然胸部大動脈瘤を認め当院紹介となった.術前CTで遠位弓部大動脈に嚢状瘤を認め,一部血栓の外側に血流も認め,最大血管径は80 mmであった.また,肺動脈も拡張しており,最大血管径は38 mmであった.大動脈瘤切迫破裂に対して治療が必要な状態であったため来院翌日,準緊急的に頸部分枝バイパス術の後,胸部ステントグラフト留置術を施行した.術中大動脈造影で弓部大動脈瘤が肺動脈に穿破していることが判明し,穿破によるシャントが心不全の急激な増悪の原因であることが明らかになった.術後のCTにて,肺動脈から瘤内への血流を認めたが,その後のCTで瘤径の拡大はなく経過観察の方針とした.心不全は改善し,他に大きな合併症がなかったため,術後37日目リハビリ目的に近医に転院し,術後5カ月目自宅退院となった.

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