2017 年 46 巻 1 号 p. 29-34
症例は50歳,男性.胸背部痛にて救急搬送となり,造影CTで,上行大動脈から左外腸骨動脈まで至る解離を認めた.右鎖骨下動脈起始異常(aberrant right subclavian artery, ARSA)を伴っており,entryはARSA付近で,右鎖骨下動脈も解離していた.左鎖骨下動脈起始部,腹腔動脈起始部も解離しており,腹腔動脈には狭窄を認めた.Entry閉鎖を含めた上行弓部大動脈置換術の適応であったが,末梢側吻合,右鎖骨下動脈再建が困難と考えられたため,オープンステントグラフト法を用い,右鎖骨下動脈は前縦隔から右腋窩動脈へのバイパスとした上行弓部置換術を行った.左右腋窩動脈に人工血管を縫合し,それぞれ灌流,左右総頸動脈には選択的脳灌流を行い,4分枝の選択的脳分離体外循環を行い,ステントグラフトはワイヤーガイド下に挿入可能な自作のものを用いた.術後は,entry閉鎖が確認でき,偽腔は血栓化,右鎖骨下動脈起始部も閉鎖されて,術後1年で良好なaortic remodelingを確認できた.ARSAを伴った大動脈疾患に関しては,さまざまな術式が工夫されて行われているが,急性A型解離に伴う緊急手術では,オープンステントグラフト法も有効な手技であると考えられた.