日本心臓血管外科学会雑誌
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[末梢血管]
心不全症状を合併した総腸骨動脈瘤・総腸骨動静脈瘻に対してステントグラフト内挿術を施行した1例
藪 直人山崎 一也栁 浩正鈴木 伸一益田 宗孝
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2017 年 46 巻 2 号 p. 93-96

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抄録

今回われわれは心不全症状を主訴として発見された左総腸骨動脈・総腸骨動静脈瘻に対してステントグラフト内挿術を施行し良好な成績を得たので報告する.症例は60歳の女性.40歳時に腰椎椎間板ヘルニア手術の既往歴あり.最近労作時呼吸困難を訴えて当院を受診した.原因を精査したところ,身体所見で左下腹部に拍動性腫瘤と連続性雑音を聴取し,胸部単純X線写真で心胸郭比70%と心陰影の拡大を認めた.CT検査で左総腸骨動脈の拡張と動脈相での下大静脈の早期造影を認め,左総腸骨動脈瘤・腸骨動静脈瘻の診断がついた.術前の高拍出性心不全,骨盤内静脈の拡張うっ血,動静脈瘻の高度癒着による術中大量出血の危険性を考慮しステントグラフト内挿術による治療を行う方針とした.ステントグラフト留置前に左内腸骨動脈コイル塞栓術を施行,動静脈瘻をより完全に閉鎖するためコントララテラル・レッグが動静脈瘻孔を二重に塞ぐように留置した.術中確認造影と術後の造影CT検査ではエンドリークや動静脈瘻の再開通は認めなかった.術後心不全症状の改善を認めた.術後2年半となる現在まで症状の再発なく良好な経過である.

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