日本心臓血管外科学会雑誌
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原著
膠原病に合併した心臓大血管病変に対する手術の検討
小泉 滋樹南方 謙二山崎 和裕阪口 仁寿上原 京勲坂本 和久西尾 博臣中田 朋宏池田 義坂田 隆造
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2017 年 46 巻 3 号 p. 101-106

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抄録

[背景]膠原病は全身の臓器に慢性的な炎症をきたす原因不明の自己免疫性疾患である.膠原病に関連する心血管病変に加えて,治療薬であるステロイドに起因する動脈硬化性の心血管病変に対してしばしば手術を必要とするが,併存する臓器障害,免疫抑制状態など,膠原病が手術に及ぼす影響は大きいと考えられる.[対象]膠原病患者における心大血管手術の成績を検討するため,2008年4月から2013年11月までに当院で行った成人心大血管手術のうち,膠原病を合併した31例と膠原病を合併していない539例を比較検討した.[結果]膠原病患者の平均年齢は64.4±16.7歳で,女性が26例(83.8%)と多く,ステロイド・免疫抑制剤は24例(77.4%)に投与されていた.膠原病群は間質性肺炎を6例(19.3%)に合併し,末梢血管疾患,頸動脈病変も非膠原病群より有意に多かった.手術死亡はなく,入院中の合併症に関しては,虚血イベント,感染症や急性腎障害,呼吸器合併症を含めいずれも非膠原病群と有意差はなかった.膠原病患者の平均27.8±16.0カ月の経過観察期間中,総死亡は4例,再入院は心血管イベントによるものが6例,創部の治癒不全が2例であった.生存症例はすべてNYHA class II以下に改善していた.[結語]膠原病を有する患者においても心大血管手術は安全に施行でき,初期・中期の良好なADLが期待できる.

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