2017 年 46 巻 3 号 p. 107-110
症例は75歳,男性.発熱,咳嗽を主訴に受診した.血液培養からEnterococcus faecalisが検出され,経胸壁心エコーで肺動脈弁に疣贅を認めたため,感染性心内膜炎の診断となった.抗生剤を8週間投与したが,解熱と発熱を繰り返し,感染のコントロールがつかず手術となった.肺動脈弁は3尖とも弁破壊が高度であった.右室流出路から主肺動脈にかけて自己心膜パッチで拡大し,生体弁(CEP magna ease 25 mm)を縫着した.術後は抗生剤を合計6週間投与し,術後68日目に独歩退院した.術後心エコーで十分なEffective Orifice Area Index(EOAI)が得られた.本症例は,明らかな誘因のない孤立性肺動脈弁位感染性心内膜炎であり,稀な症例と考えられた.自己心膜で右室流出路から肺動脈を拡大し,生体弁による肺動脈弁置換術を行うことで十分な弁口面積を得た.