日本心臓血管外科学会雑誌
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[成人心臓]
感染性心内膜炎に対する二弁置換術後の左室仮性瘤に対してパッチ閉鎖術を行った1例
三木 隆生高橋 徹茂原 淳
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2017 年 46 巻 3 号 p. 126-129

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抄録

症例は66歳,男性.慢性腎不全のため30年前より血液透析を受けていた.5年前に大動脈弁狭窄症と診断され経過観察されていた.2年前に発熱と呼吸困難を主訴に当院に救急搬送され,精査の結果,感染性心内膜炎infective endocarditis(IE)に伴う僧帽弁閉鎖不全症,および完全房室ブロックと診断された.大動脈弁および僧帽弁の二弁置換術double valve replacement(DVR)とペースメーカー移植術を準緊急で行った.感染による炎症は僧帽弁前尖の後交連から僧帽弁輪を超えて房室中隔,右房に波及する広範なものだった.術後,抗生剤の投与により感染は鎮静化した.術後3カ月目に行った経過観察の経胸壁心エコーで僧帽弁輪直下から右房内へ突出する径30 mm大の瘤状構造物を指摘され,IE術後の左室仮性瘤と診断された.その後の心エコーで瘤の拡大を認めたため,前回手術から2年後に今回の手術となった.心停止後に右房を切開すると,コッホの三角部を中心に左室仮性瘤を認め,僧帽弁輪部膿瘍が原因と考えられた.瘤壁を切開すると開口部は径約20 mmだった.径35 mmのポリエステルパッチで開口部を閉鎖した.術後の心エコーでは,瘤内は血栓化し血流はなかった.瘤壁の病理組織所見では心筋細胞は認めず,線維化した組織のみだった.IEに対するDVR後の左室仮性瘤に対して,パッチ閉鎖術を施行した稀な1例を経験したので報告する.

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