2017 年 46 巻 5 号 p. 191-194
[目的]日本心臓血管手術データベース(JCVSD)先天性部門は2008年から登録を開始し,現在,参加施設数約121施設となって全国の施設をほぼカバーしている.今回,われわれはこのデータを用い,主な術式の死亡率と術後合併症の検討を行った.[方法]JCVSDから2013年および2014年の先天性心疾患手術データを抽出した.同一手術で複数の術式が選択されている場合は,JCVSDの定義に従い第一術式を最も関連のある術式として選択した.抽出された術式のうち,頻度の高い20術式についての死亡率および主要な合併症の検討を行った.[結果]ASD repair,VSD repairの死亡率は1%未満,TOF repair, Complete AVSD repair,Bidirectional Glenn,TCPCの死亡率は2%未満であり,良好な成績であった.死亡率10%以上のものとしてはNorwood procedure,TAPVC repairなどがあった.合併症としては,術後予定外の再手術は死亡率の高い術式で多い傾向にあった.また,永続的にペースメーカー植込を必要とした不整脈,乳び胸,創部感染(深部・縦隔炎),横隔神経麻痺,退院時に継続する神経学的異常について術式ごとの発生率が示された.[結論]JCVSDの分析により,各術式の死亡率ならびに合併症の頻度を把握することができた.今後,これらを利用し,よりよいデータベースの確立および臨床へのフィードバックにつなげていくことができると考えられる.