日本心臓血管外科学会雑誌
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原著
本邦における2013,2014年の心臓血管外科手術の現状:日本心臓血管外科手術データベース(JCVSD)からの報告
5. 胸部大動脈手術
志水 秀行平原 憲道本村 昇宮田 裕章髙本 眞一
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2017 年 46 巻 5 号 p. 205-211

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抄録

[背景]大動脈疾患に対する治療は人工血管置換術(OAR)が基本であるが,ステントグラフト治療(TEVAR)やハイブリッド手術(HAR)の登場で新しい治療体系が構築されつつある.本邦の胸部大動脈手術の現状を日本心臓血管外科手術データベース(JCVSD)から分析した.[方法]日本心臓血管外科手術データベース(JCVSD)から抽出した2013~2014年の胸部・胸腹部大動脈手術データをJapanSCORE(JS)で階層化(5%未満,5~10%,10~15%,15%以上)し,疾患別(急性解離,慢性解離,非解離・非破裂,非解離・破裂),術式別(OAR,HAR,TEVAR)に手術数,手術死亡率を調査した.[結果]全体の症例数は30,271例(死亡率5.9%)であった.OARの施行率は全体で73.2%(基部98.3%,上行97.4%,基部~弓部95.5%,弓部81.7%,下行34.2%,胸腹部64.4%)であった.胸腹部では高いJSほどOAR施行率が低下した(JS<5%,5%≦JS<10%,10%≦JS<15%,15%≦でOAR施行率は80.4%,67.6%,58.8%,55.7%)が,他部位ではJSにかかわらずOAR施行率がほぼ一定であった.OARの手術死亡率はJSで良好に反映されていたが,TEVAR,HARではJSより低値であった.[結論]大動脈疾患の治療選択は疾患や部位によって大きく異なっており,必ずしもリスクスコアに基づいていなかった.OARにおいてJSは実死亡率をよく反映していた.

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