日本心臓血管外科学会雑誌
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[大血管]
大動脈弁輪拡張症,大動脈弁閉鎖不全症に右冠動脈入口部狭窄を合併した梅毒性大動脈炎に対する1手術例
酒井 麻里名倉 里織青木 正哉横山 茂樹武内 克憲土居 寿男山下 昭雄深原 一晃芳村 直樹
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2017 年 46 巻 5 号 p. 255-259

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抄録

梅毒性大動脈炎(syphilitic aortitis : SA)は現在では遭遇することが稀な疾患である.今回われわれはSAに起因する大動脈弁輪拡張症(annuloaortic ectasia : AAE),大動脈弁閉鎖不全症(aortic regurgitation : AR)に右冠動脈(right coronary artery : RCA)入口部狭窄を併発した症例に対し,modified Bentall手術および右内胸動脈を使用した冠動脈バイパス術を施行し良好な成績を得たので報告する.症例は48歳,男性.労作時易疲労感,夜間呼吸困難のため救急搬送され,精査の結果Sellers III度のAR, AAEを指摘された.その際の血清学的検査でTP抗体定量28.4 S/CO,RPR定量>20 R.Uと梅毒の現行感染が明らかとなった.CT検査では大動脈基部55 mm,上行大動脈60 mmと拡大しており,冠動脈入口部周囲に石灰化を認めた.また,冠動脈造影ではRCAの入口部評価は困難であったが,CTにてRCA入口部狭窄を疑わせる所見を認めたため,あらかじめ右内胸動脈を剥離する方針で手術に臨んだ.術中所見では大動脈内膜は不整が強く大動脈全体に変性が及んでおり,RCA入口部は線維性の内膜肥厚により入口部がほぼ閉塞していた.手術は機械弁によるmodified Bentall手術および右内胸動脈を使用した冠動脈バイパス術を施行した.病理学的所見はSAに一致し,組織抽出によるDNA検査から梅毒トレポネーマのDNAが検出された.術後経過は良好であった.現在術後2年経過するが,遠隔期合併症を認めていない.

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