2017 年 46 巻 6 号 p. 292-295
症例は66歳,男性.数秒間の浮動感を主訴に近医を受診し,心電図検査で不整脈と陳旧性心筋梗塞を疑われ,当院へ紹介となった.左室造影で左室後下壁に心室瘤を認め,冠動脈造影では左回旋枝#13の慢性完全閉塞および,冠動脈肺動脈瘻とそれに連続する冠動脈瘤を指摘された.CTでは心室瘤入口部は10mm程度と小さく,MRIでは心室瘤の壁の菲薄化と壁在血栓を,また,心収縮時の瘤拡張を認めた.陳旧性心筋梗塞による仮性心室瘤を疑い,手術を施行した.術中所見では,後下壁に壊死した心筋壁とこれに連続する心室瘤を認めた.心室瘤と心膜との癒着はまったくなかった.瘤を切開すると,入口部は10×10mm程度であった.切開部はパッチ補強を加えた直接縫合で二重に閉鎖した.冠動脈瘤は流入動脈と流出動脈をそれぞれクリッピングし,閉鎖した.術後経過は良好で,術後15病日に退院となった.病理所見では,瘤壁内に心筋細胞の残存を認め,偽性仮性瘤の診断であった.稀な症例を経験したので報告する.