日本心臓血管外科学会雑誌
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[成人心臓]
急性心筋梗塞後の心室中隔穿孔にヘパリン起因性血小板減少症(HIT)を合併し,アルガトロバンを用いて手術を施行した1例
吉岡 祐希鈴木 龍介宮本 智也上木原 健太坂口 健松川 舞平山 亮中島 昌道
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2017 年 46 巻 6 号 p. 305-310

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抄録

症例は66歳,男性.既往歴は不明.前医で急性心筋梗塞(AMI)の診断で左前下行枝#6-7に経皮的冠動脈形成術を施行され,心エコーで心室中隔穿孔(VSP)を認めたため当院へ紹介搬送となった.入院後,ヘパリン投与中に血小板の急激な減少と左室内血栓,深部静脈血栓症を認め,ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)と考えられた.体外循環の確立のためにはアルガトロバンでは活性化全血凝固時間(ACT)の延長が不十分だったため,メシル酸ナファモスタットを併用し,冠動脈バイパス術と心室中隔穿孔修復術を施行した.術後もACTの延長は改善せず,再開胸止血術を要した.術後37日目に転院となった.今回,AMI後のVSP症例の経過中にHITを合併し,アルガトロバンを用いた心臓手術を施行したが,ACTのコントロールに難渋した.HITを合併したVSPに手術を施行した報告はなく,文献的考察を踏まえ,本症例を報告する.

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