重症下肢虚血(CLI)と心疾患を合併している症例では,手術の優先順位決定や術後管理に難渋することが多い.今回僧帽弁閉鎖不全症による心不全と右下肢壊疽を合併していた症例に対して,僧帽弁置換術と下肢distal bypassを一期的に施行した1例を報告する.症例は75歳男性.閉塞性動脈硬化症に対して加療を受けていたが,右下肢の安静時痛が出現し,うっ血性心不全も発症したため当科紹介となった.心エコーでは重症僧帽弁閉鎖不全症を指摘され,EF27%の低心機能状態であった.また心不全発症を契機にして右下肢は虚血が進行し,足趾壊疽を来している状態であった.心機能の改善と救肢を目的にして,一期的に僧帽弁置換術,三尖弁輪形成術および大伏在静脈を用いた右総大腿動脈-後脛骨動脈バイパス術,右1,2趾切断術が行われた.術後の経過は良好であり,心不全の改善が得られ,右下肢の大切断も回避できた.