日本心臓血管外科学会雑誌
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[大血管]
段階的な全大動脈人工血管置換術後にステントグラフトによる人工血管損傷のため生じた非吻合部仮性動脈瘤に対し全弓部置換術を施行した Loeys-Dietz 症候群の1例
法里 優山﨑 琢磨松崎 雄一平松 健司
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2018 年 47 巻 2 号 p. 82-87

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抄録

17歳時に遺伝子診断でTGFBR1をコードする遺伝子の変異を認め,Loeys-Dietz症候群と診断された26歳女性.2007年2月大動脈基部拡張症と重症大動脈弁閉鎖不全症に対し,自己弁温存大動脈基部置換術を施行した.同年8月遠位弓部大動脈瘤および大動脈弁閉鎖不全症の増悪を認め,大動脈弁置換術および全弓部大動脈置換術を施行した.2012年2月腹部大動脈瘤に対し腹部大動脈置換術を行い,同年9月B型大動脈解離に対しTEVARを施行した.2014年4月胸腹部大動脈瘤に対しDebranching TEVARを施行した.このように段階的な全大動脈人工血管置換術を行った.2016年5月弓部大動脈に最大短径73 mmの人工血管非吻合部仮性動脈瘤を認めた.動脈瘤により頸部分枝は圧排され,頭痛やふらつきなどの一過性脳虚血症状を認めた.手術は全弓部大動脈置換術を施行した.術中,ステントグラフト中枢側フレアによる人工血管穿孔を認めた.フレアを切除し,既存のステントグラフト内にelephant trunkを挿入し末梢側を吻合し,さらに吻合部を人工血管と同径の人工血管で覆い人工血管損傷の再発を防いだ.術後脳虚血症状は改善し,術後11日目に独歩で退院した.本症例は,ステントグラフトのフレアにより人工血管を損傷し非吻合部仮性動脈瘤を形成した.全弓部大動脈人工血管再置換術を行い,その際,ステントグラフトと人工血管の干渉を防ぐ工夫を加えることで良好な結果を得ることができた.

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