日本心臓血管外科学会雑誌
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47 巻, 2 号
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巻頭言
症例報告
[先天性疾患]
[成人心臓]
  • 中村 康人, 熊田 佳孝, 水野 裕介
    2018 年 47 巻 2 号 p. 45-48
    発行日: 2018/03/15
    公開日: 2018/04/03
    ジャーナル フリー

    症例は61歳女性.労作時呼吸苦を主訴に来院し,プレショック状態であったため入院となる.CTにて右房内腫瘍と多量の血性心嚢液,および多発肝転移を認め,緊急手術を行った.腫瘍は上大静脈から心房中隔にまで浸潤しており,上大静脈と右房を牛心膜パッチにより修復した.術後病理検査は右房血管肉腫の診断であり,切除断端は陽性であった.術後化学療法を行うことにより術後14カ月生存できた例を経験したので報告する.

  • 田中 千陽, 上田 敏彦, 古屋 秀和, 山口 雅臣, 金淵 一雄, 志村 信一郎, 長 泰則
    2018 年 47 巻 2 号 p. 49-53
    発行日: 2018/03/15
    公開日: 2018/04/03
    ジャーナル フリー

    比較的稀な膜様部心室中隔瘤を合併した,中等度大動脈弁逆流を伴う大動脈弁輪拡張症を経験したので報告する.症例は60歳男性,維持透析中で,一過性心房細動の精査中に大動脈弁逆流を伴う最大短径52 mmの大動脈弁輪拡張症が認められた.術前画像診断で膜様部心室中隔瘤の合併が確認されたが,術中所見では瘤内に血栓や短絡,感染の所見などは認めなかった.瘤と大動脈弁輪間の線維組織を縫い代としてDacronパッチで瘤閉鎖し,それにより弁下部組織の強度が保たれ大動脈弁温存基部置換術を施行することができた.術後経過は良好で,術後12日目に独歩退院した.

  • 坂倉 玲欧, 鈴木 友彰, 南舘 直志, 寺田 真也, 木下 武, 浅井 徹
    2018 年 47 巻 2 号 p. 54-57
    発行日: 2018/03/15
    公開日: 2018/04/03
    ジャーナル フリー

    心筋梗塞後心室中隔穿孔(ventricular septal perforation : VSP)の早期手術は全身状態の不良,不安定な循環動態,梗塞心筋の脆弱性などの理由から手術の難易度は高く,術後成績も不良である.VSPに左室瘤を合併した場合,その修復術はさらに複雑である.われわれは,亜急性期心筋梗塞に心室中隔穿孔と左室瘤を合併し急激に心肺停止に陥った80歳の男性に対し,両心室アプローチによるダブルパッチ閉鎖と左室形成術を同時緊急手術で施行し救命に成功したので報告する.

  • 首藤 敬史, 穴井 博文, 和田 朋之, 田中 秀幸, 川野 まどか, 河島 毅之, 梅野 惟史, 吉村 健司, 内田 かおる, 宮本 伸二
    2018 年 47 巻 2 号 p. 58-61
    発行日: 2018/03/15
    公開日: 2018/04/03
    ジャーナル フリー

    症例1,67歳女性.劇症型心筋炎に対してbridge to recovery目的に両心補助人工心臓装着術を施行した.術前に中等度大動脈弁逆流を認め,生体弁(CEP Magna Ease 21 mm)による大動脈弁置換術を併施した.心機能の回復が得られたため,術後180日目に左心補助人工心臓離脱術を行った.補助人工心臓抜去後の体外循環離脱に際し,高度の左心機能低下を認め体外循環離脱困難に陥った.経食道心臓超音波で生体弁の高度狭窄が判明した.再度心停止.大動脈弁位の生体弁は,左室側から増生したパンヌスにより弁尖が癒合し高度狭窄の所見を呈した.パンヌスの剥離・除去により生体弁機能は回復し,体外循環から容易に離脱可能となった.症例2,68歳女性.劇症型心筋炎に対して両心補助人工心臓装着術および大動脈弁置換術(CEP Magna Ease 19 mm)を施行した.症例1の経験に基づき,経食道心臓超音波検査による人工弁機能評価を行い,左心補助人工心臓離脱前に大動脈弁位生体弁狭窄を診断し得た.術後73日目に,左心補助人工心臓を離脱と同時に生体弁弁尖の癒合剥離を行い狭窄を解除し,良好な結果を得た.劇症型心筋炎など重度の左心機能低下症例に対し,補助人工心臓装着および生体弁による大動脈弁置換を施行した症例では,早期に生体弁の弁尖が癒合し弁機能不全を来たす可能性があることを念頭におくべきである.

[大血管]
  • 園田 拓道, 牛島 智基, 大石 恭久, 檜山 和弘, 帯刀 英樹, 田ノ上 禎久, 塩瀬 明
    2018 年 47 巻 2 号 p. 62-65
    発行日: 2018/03/15
    公開日: 2018/04/03
    ジャーナル フリー

    大血管手術に際しては吻合部出血の制御をいかに速やかに行うことができるかが重要であるが,従来の血液由来成分を含む止血剤に加えて,近年,新規のコンセプトに基づき開発されたウレタン系止血剤であるハイドロフィット(販売名 マツダイト:三洋化成工業)が登場し胸部大動脈人工血管置換術における止血に貢献している.本剤は,血液などの水分と接触することで発泡しながら,ただちにエラストマーへ変化し周辺組織へ強力に接着して止血能力を示すため,ヘパリン存在下であっても止血できる特徴を持つ.われわれは,過去に塗布されたハイドロフィット使用症例に対して4年8カ月後の遠隔期に再手術を行った際に本剤を摘出した経験をしたので報告する.

    ハイドロフィットは特定生物由来製品をまったく含まないことから血液感染症の可能性はなく,吻合部へ塗布された部分は薄膜エラストマーとして良好な接着状態を維持しており,長期にわたり非常に良質な接着剤として機能していることが示された.日心外会誌47巻2号:62-65(2018)

  • 横山 賢司, 大石 清寿, 田﨑 大, 吉﨑 智也
    2018 年 47 巻 2 号 p. 66-70
    発行日: 2018/03/15
    公開日: 2018/04/03
    ジャーナル フリー

    症例は85歳,男性.胸部レントゲンの異常影の精査で施行したCTで弓部大動脈瘤を指摘され当科を紹介された.術前精査で椎骨動脈は左側優位であり金属アレルギー(Pt,Sn,Zn)を有することが判明した.手術では両腋窩/左総頸動脈バイパスを径8 mmのT字型人工血管を用いて作製した.左椎骨動脈は温存する方針としたがこの起始部が比較的近位側であったため,左内胸動脈起始部直前まで遠位にtranspositionし,金属アレルギーのためにコイル塞栓を行わず移植した左椎骨動脈近位で直視下に左鎖骨下動脈を結紮した.つづいて本症例のアレルギー金属を含有せず,さらに含有金属のアレルギー性が低いとされる企業製造ステントグラフト(Conformable GORE® TAG®)でZone 1以遠のTEVARを行った.術後はアレルギー反応を示唆するような特異な所見を認めずに退院し術後2年以上を経過している.金属アレルギーを有する弓部大動脈瘤に対して,コイルを使用せず左椎骨動脈を遠位側にtranspositionしたうえで左鎖骨下動脈を良好な視野で直視下に結紮し,2 debranching TEVARを施行し良好に経過した希少な症例を経験したので報告する.

  • 杉山 佳代, 松山 克彦, 小泉 信達, 丸野 恵大, 室町 幸生, 岩堀 晃也, 高橋 聡, 岩橋 徹, 西部 俊哉, 荻野 均
    2018 年 47 巻 2 号 p. 71-77
    発行日: 2018/03/15
    公開日: 2018/04/03
    ジャーナル フリー

    重症心不全を合併した大動脈瘤の直達手術においては,大動脈遮断に伴う心負荷への配慮や補助手段の選択などが問題となる.また,巨大で破裂の危険性が高い大動脈瘤と,手術適応となる重症心疾患が併存する場合,いずれの外科治療を優先するか,また適切な左心補助装置の導入や心移植登録のタイミングという問題も生じる.今回,極度の重症左室機能不全および高度僧帽弁閉鎖不全を伴い,かつ慢性大動脈解離による著明な胸部下行大動脈拡大を伴ったマルファン症候群に対し,循環虚脱を回避すべく麻酔導入前から局所麻酔下に部分体外循環を確立し,左開胸下に胸部下行大動脈人工血管置換術を施行.その後,急速に拡大した腹部大動脈瘤に対しても同様に,部分体外循環補助下に腹部大動脈人工血管置換術を施行した1例を経験したので報告する.

  • 吉田 一史, 福永 直人, 小山 忠明
    2018 年 47 巻 2 号 p. 78-81
    発行日: 2018/03/15
    公開日: 2018/04/03
    ジャーナル フリー

    血管型Ehlers-Danlos症候群は,血管脆弱性のために若年のうちに血管破裂を起こしうる.今回,短期間の経過で動脈径拡大や新規動脈瘤形成を認めた血管型Ehlers-Danlos症候群の1手術例を経験したため,文献的考察を含めて報告する.症例はCOL3A1遺伝子変異を伴う血管型Ehlers-Danlos症候群の29歳男性.左正中皮静脈破裂,左腎動脈破裂,右腎動脈瘤の既往あり.受診1カ月前の造影CTでは新規動脈瘤を認めなかった.受診当日,左下腹部痛で搬送され,造影CTで左総腸骨動脈解離性動脈瘤破裂と診断し,緊急人工血管置換術を実施した.術後造影CTでは吻合部に異常所見を認めなかったが,末梢側総腸骨動脈径拡大と新規右下殿動脈瘤と固有肝動脈瘤形成を認めた.本疾患は,血管脆弱性のため密な経過観察と画像検査が重要である.

  • 法里 優, 山﨑 琢磨, 松崎 雄一, 平松 健司
    2018 年 47 巻 2 号 p. 82-87
    発行日: 2018/03/15
    公開日: 2018/04/03
    ジャーナル フリー

    17歳時に遺伝子診断でTGFBR1をコードする遺伝子の変異を認め,Loeys-Dietz症候群と診断された26歳女性.2007年2月大動脈基部拡張症と重症大動脈弁閉鎖不全症に対し,自己弁温存大動脈基部置換術を施行した.同年8月遠位弓部大動脈瘤および大動脈弁閉鎖不全症の増悪を認め,大動脈弁置換術および全弓部大動脈置換術を施行した.2012年2月腹部大動脈瘤に対し腹部大動脈置換術を行い,同年9月B型大動脈解離に対しTEVARを施行した.2014年4月胸腹部大動脈瘤に対しDebranching TEVARを施行した.このように段階的な全大動脈人工血管置換術を行った.2016年5月弓部大動脈に最大短径73 mmの人工血管非吻合部仮性動脈瘤を認めた.動脈瘤により頸部分枝は圧排され,頭痛やふらつきなどの一過性脳虚血症状を認めた.手術は全弓部大動脈置換術を施行した.術中,ステントグラフト中枢側フレアによる人工血管穿孔を認めた.フレアを切除し,既存のステントグラフト内にelephant trunkを挿入し末梢側を吻合し,さらに吻合部を人工血管と同径の人工血管で覆い人工血管損傷の再発を防いだ.術後脳虚血症状は改善し,術後11日目に独歩で退院した.本症例は,ステントグラフトのフレアにより人工血管を損傷し非吻合部仮性動脈瘤を形成した.全弓部大動脈人工血管再置換術を行い,その際,ステントグラフトと人工血管の干渉を防ぐ工夫を加えることで良好な結果を得ることができた.

  • 松濱 稔, 小林 卓馬, 國原 孝, 後藤 智行
    2018 年 47 巻 2 号 p. 88-92
    発行日: 2018/03/15
    公開日: 2018/04/03
    ジャーナル フリー

    IgG4関連疾患は血清IgG4高値,IgG4陽性形質細胞の浸潤,線維化を主体とした腫瘤性・肥厚性病変を呈する慢性疾患である.近年心血管領域でも報告があり治療戦略が模索されている.今回,術前に偽腔閉塞型大動脈解離を疑われ,術後IgG4関連胸部大動脈瘤と診断された症例を経験したので報告する.症例は70歳男性で咳嗽を主訴に来院した.既往歴に2度の後腹膜線維症があった.胸痛等の大動脈解離を疑うエピソードはなかったが,撮影されたCTにて径52 mmの偽腔閉塞型A型大動脈解離と診断され手術を行った.術中所見では上行大動脈は著明に壁肥厚した真性瘤で解離はなく,上行大動脈および部分弓部置換術を行った.病理組織学的診断で外膜に著明な肥厚とIgG4陽性形質細胞の浸潤を認めたが中膜への浸潤や大動脈解離の所見はなかった.術後血液検査で血中IgG4が基準値をこえており,包括診断基準におけるIgG4関連胸部大動脈瘤と診断した.同疾患には偽腔閉塞型大動脈解離と判別が難しい画像所見を示す症例が存在する一方で,大動脈解離や破裂の発症との関連を疑う報告もあるため注意が必要である.

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