2018 年 47 巻 3 号 p. 95-99
ファロー四徴症修復手術後の長期生存例が増加していることに伴い,その後の後遺症(合併症・遺残症・続発症)が問題となっている.今回われわれは,ファロー四徴症に対する初回手術後48年間に複数の後遺症に対し再手術・追加手術を繰り返した症例を経験した.症例は58歳,男性.9歳時にファロー四徴症に対する心内修復術を行った.その後30歳時に心室中隔欠損遺残短絡に対する再閉鎖,遺残右室流出路狭窄に対する1弁付きパッチでの右室流出路再建および大動脈弁閉鎖不全に対する大動脈弁置換を行った.さらに47歳時に大動脈基部拡大に対する大動脈基部置換を,51歳時には徐脈性心房細動に対しペースメーカー植え込みを行った.今回58歳時には1弁付きパッチ機能不全による肺動脈弁閉鎖不全と三尖弁閉鎖不全による右心不全に対し,生体弁での肺動脈弁置換および三尖弁輪縫縮を施行した.術後は右心不全に対する厳密な内服コントロールの継続を要しているものの,NYHA機能分類はIII度からII度へと改善した.ファロー四徴症修復術後の長期生存が得られるようになったが,術後経過観察においては,起こり得る後遺症を予測して早期に診断し,手術介入の時期が遅くならないよう心掛けることが重要であると考えられた.