日本心臓血管外科学会雑誌
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[成人心臓]
人工弁感染に対する僧帽弁再置換術後に生じた左室後壁仮性瘤に対して仮性瘤切除術を施行した1例
矢野 大介桑原 史明山田 真史芦田 真一平手 裕市
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2018 年 47 巻 4 号 p. 166-169

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抄録

症例は69歳,女性.14年前に感染性心内膜炎に対して僧帽弁置換術を施行した.今回,構音障害,頭痛を主訴に当院を受診し,多発脳梗塞の診断のため入院となった.経食道超音波検査にて人工弁に巨大な疣贅を認めたため,塞栓を伴う人工弁感染(PVE)と診断し,準緊急で生体弁を用いた僧帽弁の再置換術を施行した.体外循環心停止下に,疣贅の付着した感染人工弁を摘出し,僧帽弁再置換術を施行したが,体外循環離脱時に房室間溝付近の左室後壁より拍動性出血を認めたため,左室破裂と診断し,再度心停止下に再置換した僧帽弁位人工弁を摘出した.僧帽弁輪左室側の僧帽弁後尖中央部のやや内側に心内膜の亀裂があり,同部位の破裂と診断した.左室後壁乳頭筋付着部から左房後壁に至るまで,exclusionする形でウシ心膜パッチを縫着した.さらに心外側から出血部を直接縫合閉鎖して,undersizeのステントポストのない機械弁に変更して僧帽弁置換を終了した.術後7日目の心臓超音波検査およびコンピュータ断層撮影(CT)にて,左室後壁に仮性瘤を認めた.再々手術の適応と判断していたが,術後肺炎の存在と脳梗塞による筋力低下があり,患者の強い希望により脳梗塞に対するリハビリを継続した.その経過中にCTおよび超音波検査で仮性瘤の追跡を行ったが,徐々に仮性瘤は拡大していったため,前回手術より112日目に再々手術を施行した.大腿動静脈から体外循環を確立して左前側方開胸を行い,低体温心室細動下に仮性瘤を切開してその開口部をウシ心膜を用いてパッチ閉鎖した.仮性瘤の開口部より左室内腔を観察したが,前回手術時のウシ心膜パッチや置換された僧帽弁位人工弁の位置は確認できなかった.術前のCT所見における開口部の位置と併せて考えると,前回破裂部をexclusionする目的で縫着したウシ心膜パッチのさらに左前方,房室間溝からやや距離のある部分に仮性瘤開口部が存在すると判断された.術後経過は良好であり,術後28日目に退院となった.左側開胸下低体温心室細動下の開口部閉鎖術はその視野は良好で手術操作は容易であり,僧帽弁置換術後の左室後壁仮性瘤に対する手術として1つの選択肢となりうると考えられた.

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