日本心臓血管外科学会雑誌
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[末梢血管]
解離性右鎖骨下動脈瘤に対して右鎖骨下動脈バイパスと上行部分弓部大動脈置換を施行した1例
服部 将士青見 茂之笹生 正樹新冨 静矢宮本 卓馬新浪 博士
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2018 年 47 巻 4 号 p. 201-205

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抄録

症例は69歳男性で,胸部X線写真で上縦隔に異常陰影を認め,CT検査で解離を伴う右鎖骨下動脈瘤と慢性大動脈解離を伴う上行大動脈の軽度拡大を認め,手術の方針とした.手術は右鎖骨下動脈バイパス術を含む上行部分弓部大動脈置換術を施行した.人工心肺下に右鎖骨下動脈をePTFE人工血管にて末梢側で再建し,超低体温循環停止下に逆行性脳灌流法を併用し左総頸動脈と左鎖骨下動脈の間で離断し,上行部分弓部大動脈置換術を行った.左右総頸動脈を人工血管第2,3分枝でそれぞれ再建し,最後に右鎖骨下動脈に吻合したePTFEと人工血管第1分枝と吻合した.右椎骨動脈はWillis動脈輪の発達を確認していたが,右優位であったため温存するように右鎖骨下動脈の断端形成を行った.術後の脳神経学的合併症の発症はなく,経過良好であった.超低体温循環停止併用逆行性脳灌流法は,分枝に血栓があり選択的脳灌流が行いにくい症例では有効であることが示唆された.病歴からは外傷や胸郭出口症候群ではなく,動脈硬化性病変に上行大動脈にエントリーを持つ大動脈解離を生じたことによる鎖骨下動脈瘤と考えられた.鎖骨下動脈瘤は末梢動脈瘤の中で稀であり,その中で解離性鎖骨下動脈瘤はきわめて希少と思われ報告した.

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