2018 年 47 巻 5 号 p. 252-255
症例は58歳男性.慢性糸球体腎炎に伴う末期腎不全に対して26年前に生体腎移植が施行された.3年前より腹部大動脈瘤を指摘され,3カ月前に手術が予定された.手術待機中に突然の腰痛を認め,近医の腹部単純CTで腹部大動脈瘤破裂(Fitzgerald III)と診断され,当院に搬送後緊急で腹部大動脈人工血管置換術を行った.手術中に移植腎保護目的に腋窩動脈から総腸骨動脈への血液灌流(axillo-common iliac perfusion)を行った.術後一過性に腎機能の増悪を認めたが改善し,術後10日目に前医へ転院となった.移植腎保護目的に腋窩動脈から総腸骨動脈に血液灌流を行い,移植腎機能の障害なく救命が可能であった1例を経験したので,文献的な考察も踏まえて報告する.