日本心臓血管外科学会雑誌
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47 巻 , 5 号
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巻頭言
症例報告
[先天性疾患]
  • 川又 健, 野間 美緒, 中嶋 智美, 松原 宗明, 加藤 秀之, 徳永 千穂, 坂本 裕昭, 平松 祐司
    2018 年 47 巻 5 号 p. 207-210
    発行日: 2018/09/15
    公開日: 2018/10/05
    ジャーナル フリー

    症例は在胎35週1,561 gで出生した男児.生直後の心エコーで右肺動脈上行大動脈起始症(AORPA)および膜性部心室中隔欠損症(VSD)と診断された.急速に心不全が進行したが,低体重のため日齢14に右肺動脈絞扼術を先行し,体重が増加した5カ月後に根治術を行った.右肺動脈の再建には主肺動脈右側壁をflap状に用いたが,術後に上行大動脈による圧排と瘢痕形成のため高度の右肺動脈狭窄をきたした.再手術では上行大動脈をいったん離断して右肺動脈狭窄部をパッチ形成した後,圧迫を回避するために上行大動脈後壁をパッチで延長して大動脈背側の空間を拡大した.上行大動脈前壁の一部は成長を期待して自己組織同士で吻合した.VSDを伴うAORPAの低出生体重児に対する外科修復の報告は稀であり,右肺動脈吻合部狭窄解除術の工夫を中心に報告した.右肺動脈形態や左肺高血圧の推移について,長期にわたる慎重な経過観察を要する.

[成人心臓]
  • 阪本 瞬介, 小野田 幸治
    2018 年 47 巻 5 号 p. 211-214
    発行日: 2018/09/15
    公開日: 2018/10/05
    ジャーナル フリー

    症例は76歳,女性.急性心筋梗塞発症当日にblow out型の左室自由壁破裂を発症し,IABP,PCPS使用下で破裂部修復術を施行した.術後7日目に心室中隔穿孔が判明したが,内科的治療を強化,継続したうえで術後18日目に心室中隔穿孔修復術(infarct exclusion法)を施行した.急性心筋梗塞後の機械的合併症(自由壁破裂・心室中隔穿孔・乳頭筋断裂)のうち2つ合併した病態は重複破裂と言われ,稀な病態であり,その予後はきわめて悪い.今回,重複破裂に対して2度の手術を行い,救命できた症例を経験したので報告する.

  • 安東 悟央, 新宮 康栄, 大岡 智学, 加藤 裕貴, 橘 剛, 久保田 卓, 松居 喜郎
    2018 年 47 巻 5 号 p. 215-219
    発行日: 2018/09/15
    公開日: 2018/10/05
    ジャーナル フリー

    冠動脈肺動脈起始症(ACAPA)は稀な先天性冠動脈異常であり,多くは幼少期に手術介入を要する.右冠動脈肺動脈起始症(ARCAPA)は左冠動脈肺動脈起始症(ALCAPA)よりもさらに稀である.われわれは成人期のARCAPAに対する手術症例を経験した.症例は60代女性,主訴は胸痛.冠動脈CTおよび冠動脈造影で,左前下行枝・中隔枝より発達した側副血行路が右冠動脈を逆行性に灌流し,主肺動脈に流入することを確認した.肺体血流比は1.21であった.心臓MRIで右冠動脈と左前下行枝の領域に虚血所見を認めた.手術は,右冠動脈の上行大動脈への再移植(reimplantation)と肺動脈パッチ形成を施行した.術翌日に抜管し一般病棟へ転棟,術後18日目に退院となった.術後15カ月が経過した現在,胸部症状なく外来通院中である.成人期のARCAPAに対し手術を施行し良好な結果を得たので報告する.

  • 森 晃佑, 矢野 光洋, 松山 正和, 西村 征憲, 川越 勝也, 岩﨑 あや香
    2018 年 47 巻 5 号 p. 220-223
    発行日: 2018/09/15
    公開日: 2018/10/05
    ジャーナル フリー

    症例は77歳女性.重症大動脈弁狭窄症および僧帽弁輪に高度の石灰化を伴う重症僧帽弁狭窄症の診断で入院した.術前血小板数が7万台と減少していたが,骨髄検査では異常を認めず,弁膜症に伴うshear stressによる血小板破壊が原因と考えられた.手術は大動脈弁置換(ATS AP360 18 mm),僧帽弁置換(ATS Standard 23 mm),左室流出路心筋切除を行った.僧帽弁には高度の弁輪石灰化を伴っていたため,CUSAによる脱灰後に弁置換を行った.術後は一過性のsick sinus syndromeを認めた以外に経過は良好で,血小板数は自然と回復した.術後12カ月以上が経過したが,血小板数は11万前後を維持している.

  • 寺園 和哉, 上野 隆幸, 福元 祥浩, 向原 公介, 川津 祥和, 藏元 慎也, 白桃 雄太, 井本 浩
    2018 年 47 巻 5 号 p. 224-227
    発行日: 2018/09/15
    公開日: 2018/10/05
    ジャーナル フリー

    心臓悪性腫瘍および左房壁内血腫は非常に稀である.今回われわれは,左房壁内血腫摘出10カ月後の左房腫瘍再発で平滑筋肉腫と診断された症例を経験したので報告する.症例は52歳女性で,呼吸困難を主訴に近医を受診し,経胸壁心臓超音波検査にて左房内に腫瘍を指摘されたため,手術目的に当院紹介となった.人工心肺下に腫瘍摘出術を施行し,術後の病理学的検査にて左房壁内血腫の診断となった.術後10カ月目に心不全を発症し,心臓超音波検査にて左房内腫瘍の再発,左房壁の全周性肥厚を認めたため,左房壁内血腫再発または左房内腫瘍の診断にて再手術を施行した.左房壁は全周性に白色肥厚・硬化しており,左房後壁に2 cm大の弾性硬の腫瘤が存在した.完全切除は困難と判断し,腫瘤と肥厚した左房後壁の一部のみを切除した.術後の病理学的検査では平滑筋肉腫の診断となった.術後は化学療法を行ったが,心不全コントロールに難渋し,再手術9カ月後に死亡した.

  • 大場 淳一, 宮武 司, 吉本 公洋, 奥山 淳, 杉本 聡
    2018 年 47 巻 5 号 p. 228-234
    発行日: 2018/09/15
    公開日: 2018/10/05
    ジャーナル フリー

    心停止で発症した心サルコイドーシス症(心サ症)の女性に左室オーバーラッピング手術(LVOL)を行った.特に既往歴なく動脈硬化危険因子の少ない60歳代女性が心停止で発症した.夫によるby-stander CPRで循環が再開した.急性冠症候群を疑われたが冠動脈造影では有意な狭窄なく左室造影で広範囲の奇異性運動領域がみられた.心筋シンチと心臓MRIでは冠動脈の領域に一致しない血流欠損と線維化がみられたことから心サ症を強く疑ったが確定診断には至らなかった.左室瘤があり,心不全と不整脈によると推測される心停止歴があることから左室縮小形成術と植え込み型除細動器(ICD)植え込みの適応と考えられた.LVOL後にICDを植え込み,ステロイドを導入して退院した.術中に採取した左室壁の病理組織所見のHE染色では多核巨細胞を伴う非乾酪性類上皮肉芽腫がみられ,心サ症の確定診断がついた.術後1年半の現在,自宅で心不全の兆候なく通常の生活を送っている.心サ症の病変は限局性のものから広範のものまでスペクトラムは広い.病変の局在と広がりに応じてさまざまな術式が考えられるが,LVOLは1つの選択肢となりうる.

  • 在國寺 健太, 水野 明宏, 小川 辰士, 齊藤 慈円, 須田 久雄
    2018 年 47 巻 5 号 p. 235-238
    発行日: 2018/09/15
    公開日: 2018/10/05
    ジャーナル フリー

    再開胸を伴う開心術では心大血管損傷や,創部,胸骨感染などのリスクが高く,なかでも冠動脈バイパス術後の再手術では,剥離に伴うグラフト損傷のリスクがあり術式の工夫が必要である.症例は冠動脈バイパス術を受けた既往のある69歳の男性で,息切れと心雑音の精査目的に紹介された.バイパスグラフトはすべて開存していたが,重度の虚血性僧帽弁閉鎖不全症のため,右開胸,内視鏡補助下に心拍動下両弁尖腱索温存の僧帽弁置換術を施行した.術後の経過は良好で術当日に人工呼吸器を離脱し,術後7日で合併症なく退院した.右開胸による心拍動下僧帽弁置換術は,グラフト損傷の回避,出血量の低減や手術時間の短縮などの観点から,冠動脈バイパス術後の再手術症例では有用なオプションの1つとなり得る.

  • 尾関 貴啓, 伊藤 敏明, 前川 厚生, 澤木 完成, 所 正佳, 柳澤 淳次, 折居 衛, 雑賀 俊行
    2018 年 47 巻 5 号 p. 239-242
    発行日: 2018/09/15
    公開日: 2018/10/05
    ジャーナル フリー

    症例は68歳,男性.僧帽弁狭窄症,三尖弁閉鎖不全症,心房細動に対し僧帽弁置換術,三尖弁形成術,MAZE手術を内視鏡下右小開胸で施行した.特記すべき合併症なく第7病日に退院となったが,退院後約2カ月が経過した頃より心嚢水貯留と右心不全症状を認め,利尿剤やステロイドなど内服加療を行ったがコントロール困難で入院を繰り返した.CT検査や心臓超音波検査では特異的な所見は認めなかったが,心臓カテーテル検査でdip and plateau patternを認めたため収縮性心膜炎と診断し,胸骨正中切開で心膜切除術を施行した.心膜は皮革状の肥厚を認め,心外膜に強固に癒着していた.心膜切除により,術中から中心静脈圧の低下に加え肉眼的にも右室収縮の改善を認めた.術後1年現在経過良好である.心臓手術後の収縮性心膜炎は稀な合併症であるが,特に低侵襲手術後の収縮性心膜炎の報告は過去になかったため,文献的考察を加えて報告する.

[大血管]
  • 熊谷 国孝, 森本 啓介, 小野 公誉, 黒田 弘明
    2018 年 47 巻 5 号 p. 243-247
    発行日: 2018/09/15
    公開日: 2018/10/05
    ジャーナル フリー

    症例は77歳,男性.突然の前胸部痛および血圧低下により当院へ搬送された.心臓超音波検査にてバルサルバ洞の拡大を伴う高度大動脈弁逆流および心タンポナーデを認めた.胸部CT検査にて上行大動脈にcrescent signを認めた.術前診断は破裂性Stanford A型急性大動脈解離とし,緊急手術を施行した.術中所見では,血性心嚢液,上行弓部大動脈周囲の血腫および上行大動脈中枢側前壁に2 cm弱の破裂孔を認めた.本症例はバルサルバ洞の拡大を伴う高度大動脈弁逆流も認めたため,人工血管(Jグラフト 28 mm)および人工弁(マグナ EASE 25 mm)を用いて上行大動脈および大動脈基部置換術を施行した.病理組織検査の結果,上行大動脈破裂孔部において大動脈壁全層の断裂および外膜外の血種形成を認め,特発性上行大動脈破裂と診断した.術後経過は良好にて自宅へ独歩退院となった.特発性大動脈破裂は明らかな外傷,大動脈瘤,大動脈解離を伴わない大動脈の破裂とされており,稀で予後不良な疾患であり,外科的治療が必要であるといわれている.今回,術前Stanford A型急性大動脈解離と鑑別困難であった特発性大動脈破裂の1手術例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

  • 呉 晟名, 高橋 信也, 森田 翔平, 前田 和樹, 片山 桂次郎, 黒崎 達也, 末田 泰二郎
    2018 年 47 巻 5 号 p. 248-251
    発行日: 2018/09/15
    公開日: 2018/10/05
    ジャーナル フリー

    患者は生来健康の40歳男性,Marfan症候群の家系である.Stanford A型急性大動脈解離に対し当科にてBentall手術を施行した.術後は心嚢・縦隔内に液体貯留を認めたが,全身状態に影響ないと判断し経過観察とした.また,左鎖骨下送血部にも液体貯留を認めたが経過観察とした.術後5カ月に前胸部正中創に拍動を伴う腫瘤が出現した.CTでは心嚢・縦隔内の液体貯留が増加し,皮下腫瘤と交通していた.吻合部破綻を疑い,緊急手術を施行した.貯留した液体は黄色透明であり,perigraft seromaと診断した.Seroma除去後に再発予防目的に人工血管周囲に有茎大網充填を施行した.術後はseromaの再発なく良好に経過した.また,縦隔内のseromaの消失に伴い,左鎖骨下送血部の液体貯留も消失した.

  • 川越 勝也, 中村 栄作, 古川 貢之, 矢野 光洋, 中村 都英
    2018 年 47 巻 5 号 p. 252-255
    発行日: 2018/09/15
    公開日: 2018/10/05
    ジャーナル フリー

    症例は58歳男性.慢性糸球体腎炎に伴う末期腎不全に対して26年前に生体腎移植が施行された.3年前より腹部大動脈瘤を指摘され,3カ月前に手術が予定された.手術待機中に突然の腰痛を認め,近医の腹部単純CTで腹部大動脈瘤破裂(Fitzgerald III)と診断され,当院に搬送後緊急で腹部大動脈人工血管置換術を行った.手術中に移植腎保護目的に腋窩動脈から総腸骨動脈への血液灌流(axillo-common iliac perfusion)を行った.術後一過性に腎機能の増悪を認めたが改善し,術後10日目に前医へ転院となった.移植腎保護目的に腋窩動脈から総腸骨動脈に血液灌流を行い,移植腎機能の障害なく救命が可能であった1例を経験したので,文献的な考察も踏まえて報告する.

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