2018 年 47 巻 6 号 p. 257-262
[背景]腹部ステントグラフト内挿術後に持続するエンドリークは瘤径拡大や破裂の原因となる.特にType IIエンドリークに対する標準術式は存在しない.最近Type IIエンドリークによる瘤拡大に対し,開腹下に腰動脈を結紮しステントグラフトを温存しつつ瘤を縫縮する方法が報告されるようになってきた.[目的]Type IIエンドリークに対する腰動脈結紮・ステントグラフト温存瘤縫縮術を施行した5例の術後成績と瘤径変化を検討する.[方法]持続するType IIエンドリークを有し初回腹部ステントグラフト内挿術時から10 mm以上瘤径が拡大するか,最大短径65 mm以上となった症例を手術適応とした.腹部正中切開し,腎動脈下の近位側のランディングゾーンで大動脈をバンディングした.大動脈を遮断することなく大動脈瘤前壁を切開し,血種を除去してType IIエンドリークの原因となっている腰動脈や正中仙骨動脈を大動脈瘤の内腔もしくは瘤壁の外側で結紮した.最後にステントグラフトを被覆するように瘤壁を縫縮した.[結果]初回手術から今回の腰動脈結紮・ステントグラフト温存瘤縫縮術までの期間は平均47±17カ月であった.手術時間は215±76分,4例に他家輸血を要した.術後平均在院日数は26±20日で在院死亡を認めなかった.術後合併症として誤嚥性肺炎を1例に,創感染を1例に認めた.瘤径は術前68±8 mmから術後47±5 mmに減少した.さらに677±322日の最終フォローアップ時における瘤径は36±7 mmであり早期の瘤縮小効果を認めた.[結語]持続するType IIエンドリークに対する腰動脈結紮・ステントグラフト温存瘤縫縮術は開腹の侵襲を考慮し,適応は慎重に検討すべきであり,長期成績については今後のフォローアップを要するが,比較的根治性と安全性が高く,標準術式となりうる.