2018 年 47 巻 6 号 p. 263-266
症例は日齢17女児で,診断は肺動脈スリング,動脈管開存,左上大静脈遺残である.動脈管が太く,出生直後の呼吸状態は安定していたが,徐々に頻呼吸となり,日齢13に気管挿管された.術前のCTや気管支鏡検査では明らかな気管狭窄を認めなかった.日齢16に動脈管離断の方針としたが,麻酔導入時に換気不全となり,CTと気管支鏡検査で気管狭窄が顕在化していることが判明した.そのため日齢17に正中アプローチ,人工心肺下での動脈管離断,肺動脈スリングの修復,気管形成を行った.動脈管を離断し,左肺動脈は右肺動脈からの起始部で離断して主肺動脈に移植した.気管を離断し,slide tracheoplastyによる気管形成を行った.術後呼吸状態は正常化し,CT上でも気管狭窄が解除されていることを確認した.新生児期に気管への介入が必要な肺動脈スリングの報告は少ないが,気管狭窄合併例では気管と肺動脈に対する同時手術は有用な治療法であると考えられた.