日本心臓血管外科学会雑誌
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総説(依頼)
本邦における心臓血管外科手術の現状:2015年,2016年の日本心臓血管外科手術データベースの検討
4. 胸部大動脈手術
志水 秀行平原 憲道本村 昇宮田 裕章髙本 眞一
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2019 年 48 巻 1 号 p. 18-24

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抄録

[背景]大動脈疾患治療には人工血管置換術(OAR),ステントグラフト治療(TEVAR),ハイブリッド手術(HAR)があり,その治療選択は時代とともに変化しつつある.[方法]日本心臓血管外科手術データベース(JCVSD)から抽出した2015~2016年の胸部・胸腹部大動脈手術データから,疾患(急性解離,慢性解離,非解離・破裂,非解離・非裂),部位(基部,上行,基部~弓部,弓部,下行,胸腹部),治療法(OAR,HAR,TEVAR)ごとの手術数,30日死亡率,主な合併症(脳卒中,対麻痺,腎障害)の合併率を調査した.[結果]全体の症例数は35,427例(死亡率7.3%),OARの施行率は64.0%であった.2013~2014年との症例数の比較では,総数で17.0%,OARが2.4%,HARが126.1%,TEVARが34.9%の増加であった.弓部治療後の脳卒中合併率は全体としてHAR 10.1%,OAR 8.4%,TEVAR 7.3%の順であったが,非解離・非破裂例ではOARが最も低率であった.対麻痺の合併率は下行・胸腹部大動脈でHAR 6.3%・10.4%,OAR 4.3%・8.9%,TEVAR 3.4%・4.6%の順であった.腎不全の合併率はTEVARが最も低率であった.[結論]本邦における胸部・胸腹部大動脈の治療症例数は増加しているが,OARの症例数は横ばいであった.多くの場合TEVARの死亡率や合併症の発症率が低かったが,真性弓部瘤の術後脳卒中に関してはOARが最も低率であった.

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