日本心臓血管外科学会雑誌
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総説(依頼)
本邦における心臓血管外科手術の現状:2015年,2016年の日本心臓血管外科手術データベースの検討
3. 心臓弁膜症手術
阿部 知伸中野 清治平原 憲道本村 昇宮田 裕章髙本 眞一
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2019 年 48 巻 1 号 p. 11-17

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抄録

[目的]先回の報告に続き,JCVSDのデータより2015~2016年の本邦における弁膜症手術につき,治療法の選択,特に人工弁選択に着目して,弁位別,年代別,術式別の手術死亡率,機械弁・生体弁の使用比率を明らかにし,また2013~2014年からの経時的傾向についても検討する.各弁位,各術式につき手術合併症の発生率を検討する.[方法]JCVSDデータベースより2015年と2016年の心臓弁膜症手術データを記入の手引きの項目に基づき,先回の報告の定義を踏襲して弁位別に抽出した.経カテーテル的大動脈弁置換術は新たに項目を設けた.年齢層別,弁位別の機械弁・生体弁の選択数,術式別の手術数,手術死亡率を得た.各年齢層での弁置換の人工弁選択について生体弁の比率を示し,2013~2014年の結果と比較した.透析患者については別途集計を行った.各術式について,手術死亡率に加え今回新たに合併症率を示した.各術式の死亡率について2013~2014年と比較した.[結果]2015~2016年の総大動脈弁置換術数は26,054例で,2013~2014年から微増した.経皮的大動脈弁植え込み術はJCVSDに登録された数で3,305例であった.僧帽弁置換は5,652例,僧帽弁形成は12,024例と2013~2014からほぼ変わらなかった.人工弁選択について,生体弁の比率が大動脈弁置換術において80代,70代,60代でそれぞれ96.5%,92.7%,63.5%と2013~2014年と比べ有意に高くなった(p<0.05).一方50代以下ではその傾向はみられなかった.血液透析患者において一般患者より機械弁の選択が多い数値で2013~2014年と同様の傾向であった.手術死亡率は大動脈弁置換術,僧帽弁置換術,僧帽弁形成術,三尖弁置換術でそれぞれ4.1%,7.1%,2.2%,10.5%,Strokeは2.7%,2.8%,1.5%,1.0%などであった.僧帽弁形成術において2013~2014年から手術死亡率の有意な低下(p<0.05)がみられた.[結語]2015~2016年の本邦における弁位別,年代別の各術式での手術死亡率,機械弁・生体弁の使用比率,その経時的傾向が明らかになった.生体弁使用比率が上がっている傾向が明らかとなった.

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