日本心臓血管外科学会雑誌
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[大血管]
感染性腹部大動脈瘤破裂に対し腹部大動脈ステントグラフト内挿術を行った1例
平野 雅大恒吉 裕史植木 力山中 憲佐藤 博文
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2019 年 48 巻 1 号 p. 69-72

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抄録

症例は80歳男性.発熱,腰痛を主訴に前医を受診し後腹膜膿瘍,化膿性脊椎炎の診断で入院した.血液培養ではKlebsiella pneumoniaeが検出され抗生剤加療が行われた.第19病日にCTで後腹膜膿瘍の悪化と腹部大動脈破裂の所見を認めたため,同日当院に緊急搬送となった.血液検査でWBC 10,400(/μl),CRP 12.3(mg/dl)と上昇を認め,胸腹骨盤部造影CTで右腸腰筋に及ぶ後腹膜膿瘍と,腹部大動脈から膿瘍内への造影剤流出を認め,感染性大動脈瘤の破裂と診断した.緊急で腹部大動脈ステントグラフト内挿術を行う方針とした.術中造影では腎動脈下で腹部大動脈外への造影剤漏出を認めExcluder® アオルタエクステンダー23 mm×3.3 cmを2個留置した.術後抗生剤はミノサイクリン(MINO),アンピシリン(ABPC)経静脈投与を行い,術後造影CTではエンドリークはなく膿瘍の縮小を認めた.術後4週間後に抗生剤をMINO,シプロフロキサシン(CPFX)経口投与に切り替え,6カ月継続した.術後2年の時点で感染再燃なく経過している.感染性大動脈瘤破裂に対しEVARのみで救命できた症例を経験したため文献的考察を加えて報告する.

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