2019 年 48 巻 1 号 p. 91-94
気管腕頭動脈瘻は気管切開後に稀に認められる合併症だが,突然の致死的出血を来すことがあり,予後は著しく不良である.症例は10歳,女児.生後10カ月時にムンプス脳炎後の後遺症で重度精神運動発達遅滞となり,5歳時に気管切開術および胃瘻造設術を施行され,他院で加療中であった.気管切開部からの大量出血を来たし,近医に救急搬送された.近医搬送時は心肺停止状態であり,高度の貧血を認めた.心肺蘇生後,CT検査で気管腕頭動脈瘻と診断され,当院に転院搬送され,緊急手術の方針となった.来院時は一時的に止血していたが,麻酔導入時に再出血を認めた.胸骨正中切開下に腕頭動脈を大動脈からの起始部と右鎖骨下動脈分岐部の中枢部で離断し,気管と接する部分は放置した.術後経過は良好で,新たな神経学的後遺症を来すことなく退院した.長期間の人工呼吸管理を余儀なくされる重症心身障害児では気管腕頭動脈瘻の発生頻度はけっして低くないため,発症予防策を十分に講じるとともに発症時の迅速な外科的対応が重要である.