2019 年 48 巻 2 号 p. 103-106
[背景]Endoscopic vessel harvesting(EVH)は,CABGにおける低侵襲グラフト採取法である.しかし,EVHは技量を習得するまでのラーニング・カーブを要し,不適切な手技は静脈へのダメージ増大,静脈グラフトの開存性低下,長期予後への影響を来す.Off-the-job trainingはこのラーニング・カーブを短縮できると期待される.今回イービーエム社が大伏在静脈(SVG)採取モデルを新開発し,その効果を検証した.[目的]EVHシミュレータを用いて集中トレーニングを行い,その臨床効果を検証すること.[対象および方法]EVH練度の低い修練医1名を対象とした.EVHシミュレータで内視鏡のセットアップから剥離操作までを連続20回行い,終了後にEVHを実臨床で1例行った.トレーニング施行前後に施行したEVH症例を,セットアップにかかる時間,内視鏡による視野確保,剥離操作,血管の切離の項目を5段階評価にした表を用いて比較した.[結果]EVHシミュレータトレーニングにかかる時間は10例でほぼ安定化した.シミュレータトレーニング前後の実臨床では,各項目で向上した.[考察]シミュレータによるoff-JTでは,適切なシミュレータ,指導者,研修の明らかな目的が,効果的なトレーニングを行う上で重要である.今回指導者の元での集中EVHシミュレータトレーニングは臨床の技量を向上させるのにたいへん有用であった.[結語]新開発のEVHシミュレータを用いたトレーニングは,実臨床施行前の有効な練習方法である.