日本心臓血管外科学会雑誌
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[成人心臓]
反復性多発脳梗塞を認めた抗リン脂質抗体症候群合併例に対する大動脈弁置換術の経験
名倉 里織坂田 公正酒井 麻里深原 一晃
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2019 年 48 巻 2 号 p. 119-124

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抄録

61歳女性.36歳時に右下肢深部静脈血栓症,38歳時に原発性抗リン脂質抗体症候群(primary antiphospholipid syndrome : primary APS)と診断されている.54歳時に急速進行性糸球体腎炎を発症,腎機能悪化により1カ月前から血液透析が導入されていた.夜間呼吸困難を訴え救急外来を受診,心エコー検査にて重症大動脈弁狭窄兼閉鎖不全症(Aortic stenosis and regurgitation : ASR)を認め,シャント造設も影響して左心不全に陥ったと考えられた.また数日前から頭痛,失書,失算の症状があり,頭部MRI検査を施行したところ多発脳梗塞の所見も認めた.ASRに対し早期手術が望ましいと考えられたが,急性期脳梗塞脳を合併しており期間をおいての手術を予定した.経過観察中にも無症候性に新規脳梗塞を認め,入院38日目に生体弁による大動脈弁置換術(Aortic valve replacement : AVR)を施行した.活動性の高いprimary APSを合併しており,Aspirin内服下で手術を施行,術後も早期よりHeparinの投与を行った.周術期血栓症トラブルなく,術後34日目に独歩退院となった.術前にprimary APSによると考えられる脳梗塞を反復した症例に対するAVRを経験したので,若干の文献的考察を含め報告する.

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